高額療養費の所得区分はいつの年収?退職・転職・扶養入り後の上限

高額療養費の所得区分を給与明細・税資料・健康保険情報から判定することを示す図解 医療・介護

高額療養費の上限を調べるとき、「年収はいまの給料で見るのか」「退職して収入が減ったら、すぐ低い上限になるのか」と迷いやすいところです。

結論からいうと、会社員の健康保険と国民健康保険では、所得区分を決める資料が違います。会社の健康保険では主に標準報酬月額、国民健康保険では前年または前々年の所得を使います。退職後の現在収入だけを見て、上限を自己判断することはできません。

さらに、2026年8月診療分から高額療養費の月額上限と年間上限が変わり、2027年8月には所得区分の細分化も予定されています。この記事では、2026年9月4日時点の制度を基に、退職・転職・扶養入り・国保加入で確認すべき順番を整理します。

結論:最初に「診療月の加入保険」を確認する

高額療養費の所得区分は、単純な手取り額や銀行口座への振込額では決まりません。まず、診療日に加入していた医療保険を確認します。同じ月の途中で保険が変わったときは、資格の切替日を境に、どちらの保険で受診したかを分けて整理してください。

所得区分は何を見て決まるか
加入先 区分の確認に使うもの
勤務先の健康保険主に標準報酬月額。給与の手取り額とは別。保険者・勤務先へ確認
市区町村の国保主に前年所得など。年度の切替と世帯の所得も市区町村へ確認
後期高齢者医療住民税課税所得など。窓口負担割合だけで決めず、市区町村・広域連合へ確認

注:年齢・所得・非課税の判定が関係します。区分名を自己判断せず、加入先へ確認してください。

確認日:2026年9月4日

「2026年の年収はいくらか」だけでは答えが出ないのは、判定に使う月と所得の時点が制度ごとに異なるためです。

会社の健康保険は「標準報酬月額」で区分する

協会けんぽや健康保険組合に加入している70歳未満の人は、原則として被保険者の標準報酬月額で所得区分を確認します。標準報酬月額は、基本給だけでなく、残業手当や通勤手当などを含む報酬月額を一定の幅に区切った等級です。

そのため、次の金額とは一致しないことがあります。

  • 税金や社会保険料を引いた後の手取り額
  • 賞与を単純に12で割った金額
  • 退職後に受け取る失業給付
  • 同居家族全員の年収合計

2026年8月から2027年7月までの70歳未満の区分は、標準報酬月額83万円以上、53万~79万円、28万~50万円、26万円以下、住民税非課税の区分に分かれます。上限額そのものは、高額療養費2026・2027年改正の所得別上限表で確認できます。

出典:全国健康保険協会「高額療養費」

給与が下がっても、すぐ標準報酬月額が変わるとは限らない

標準報酬月額は、毎月の手取りに合わせて自動的に上下するものではありません。定時決定や固定的賃金の変更に伴う随時改定など、社会保険上の手続きにより変更されます。

随時改定の要件を満たす場合は、固定的賃金が変わった月から3か月間の報酬を基に、原則として4か月目から標準報酬月額が改定されます。一方、固定給が変わらず残業だけが減った場合などは、随時改定の対象にならないことがあります。

病気で残業が減った、休職して給与が下がったという場合でも、診療月に健康保険が保有している標準報酬月額がどの等級かを確認してください。給与明細だけで判断せず、勤務先の社会保険担当または健康保険へ「〇月診療分の高額療養費は、どの標準報酬月額で判定されますか」と尋ねるのが確実です。

出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」

扶養家族の医療費も被保険者の区分で見る

会社の健康保険で扶養に入っている配偶者や子どもが高額な治療を受けた場合も、所得区分は原則として健康保険の被保険者本人を基に判定します。

たとえば、収入のない配偶者が被扶養者であっても、それだけで住民税非課税の低所得区分になるわけではありません。扶養する側の標準報酬月額や課税状況を確認します。

同じ健康保険に加入する家族の自己負担は、条件を満たせば世帯合算できることがあります。ただし、同居していても会社の健康保険と国民健康保険に分かれている場合は、原則として一つに合算できません。

世帯合算の21,000円基準や薬局分の扱いは、高額療養費の世帯合算|家族の医療費をまとめる条件で整理しています。

国民健康保険は前年・前々年の所得で判定する

国民健康保険では、会社員時代の標準報酬月額ではなく、世帯の国保加入者の所得などを使います。70歳未満では、一般に国保加入者の「基礎控除後の総所得金額等」の合計で区分します。

判定に使う所得の年は、診療月によって切り替わります。

国保で参照する所得の年
2026年の診療月 所得区分の確認に使う所得
1〜7月2024年中の所得を基にした2025年度の判定
8〜12月2025年中の所得を基にした2026年度の判定

注:国保の一般的な切替の整理です。失業に伴う軽減、所得の未申告、修正申告、同じ月の保険変更がある方は、加入先の判定を確認してください。

確認日:2026年9月4日

このため、2026年に退職して収入が大きく減っても、2026年8月以降の区分は原則として2025年所得を使います。「現在は無収入だから、すぐ住民税非課税区分になる」とは限りません。

横浜市や大阪市も、1月~7月診療分は前々年、8月~12月診療分は前年の所得で区分すると案内しています。自治体の案内は申請方法や必要書類が異なる場合があるため、自分が加入する市区町村で再確認してください。

出典:横浜市「高額療養費支給制度」大阪市「高額療養費」

退職すると高額療養費の区分はどう変わる?

退職後は、次のどの医療保険を選ぶかで判定方法が変わります。

  1. 前の健康保険を任意継続する
  2. 家族の健康保険の扶養に入る
  3. 国民健康保険へ加入する
  4. 再就職先の健康保険へ加入する
退職後の加入先所得区分で見るもの注意点
任意継続任意継続先が設定する標準報酬月額等退職前と同じ手取り額で判定するとは限らない
家族の扶養家族である被保険者の標準報酬月額等自分の現在収入だけでは決まらない
国民健康保険前年・前々年の世帯所得等退職前の給与所得が判定に残る場合がある
再就職先の健康保険新しい勤務先で決定された標準報酬月額等資格取得日と診療日を確認する

退職日と再就職日の間に医療機関を受診した場合は、どの保険資格で受診したのかを領収書と資格情報で確認します。古い保険証や資格情報を誤って使うと、後から医療費の返還・再請求が必要になることがあります。

非自発的失業者は給与所得を30%として判定する特例がある

国保では、離職日時点で65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者などに該当する方は、給与所得を30%として高額療養費の所得区分を判定する軽減を受けられる場合があります。単に失業した人全員が対象になる制度ではありません。雇用保険受給資格者証・受給資格通知の離職理由と、加入先への届出を確認してください。世帯のほかの所得も関係するため、必ず区分が下がるとは限りません。

給与収入や国保料の総額を一律30%にする制度ではありません。事業所得など、給与以外の所得も同じ割合にするわけではありません。

対象コードと申請期間は、会社都合・雇い止めの国保料軽減|離職コード一覧も参照してください。

出典:横浜市「非自発的失業者の保険料軽減」

住民税非課税は「本人が無収入」だけでは決まらない

高額療養費の低所得区分では、本人だけでなく、被保険者や世帯の住民税課税状況を確認します。国保では世帯主が国保に加入していない場合でも、低所得区分の判定に世帯主の課税状況が関係することがあります。

また、所得税が0円でも、必ず住民税非課税とは限りません。扶養人数、控除、自治体の基準などにより判定が変わるため、次の書類を用意して保険者へ確認します。

  • 資格情報のお知らせ、資格確認書、マイナ保険証
  • 標準報酬月額が分かる通知または給与明細
  • 住民税課税・非課税証明書
  • 源泉徴収票または確定申告書の控え
  • 雇用保険受給資格者証・受給資格通知

前年所得の申告が済んでいないと、保険者が低所得区分を確認できないことがあります。収入がなかった人も、自治体から住民税申告が必要と案内された場合は手続きをしてください。

70歳以上・75歳到達月は別の判定が入る

70歳以上は、外来個人の上限と、入院を含む世帯上限を分けて計算します。現役並み所得、一般、低所得Ⅰ・Ⅱなどの区分があり、会社の健康保険、国保、後期高齢者医療で確認資料が異なります。

75歳の誕生日には、原則として後期高齢者医療制度へ移ります。月の途中で75歳になる方には、誕生日前の医療保険と誕生日後の後期高齢者医療で、誕生月の上限をそれぞれ2分の1にする特例があります。1日生まれの方は、この特例の対象外です。単純に一つの保険へ1か月分をまとめるわけではありません。

配偶者が会社の健康保険の扶養に入っていた場合は、本人が75歳になると扶養家族も同じ健康保険から外れることがあります。手続きは75歳になる月の健康保険の切り替えと扶養家族で確認できます。

月の途中で保険が変わると上限も別々に判定される

高額療養費は暦月単位ですが、同じ月の途中で保険者が変わった場合、変更前と変更後の自己負担を一つの保険者で合算できないことがあります。

たとえば、9月15日に退職して9月16日から国保へ加入した場合は、退職前の健康保険と国保が、それぞれの資格期間と所得区分で高額療養費を計算します。世帯合算や多数回該当の回数も、保険者変更で引き継げない場合があります。

同じ病院への入院が続いていても、保険の切替日を病院へ伝え、新旧両方の保険者に次を確認してください。

  1. 資格喪失日と資格取得日
  2. 診療月の所得区分
  3. 高額療養費の申請先
  4. 多数回該当の回数の扱い
  5. 年間上限の計算に必要な証明書

入院が月をまたぐ場合の計算は、高額療養費は月またぎでどうなる?で具体例を掲載しています。

2026年8月と2027年8月に上限表が変わる

2026年8月診療分から月額上限が見直され、8月から翌年7月を計算期間とする年間上限が始まりました。2027年8月には所得区分をさらに細分化する予定です。

厚生労働省は、治療・育児・介護などのために労働時間を短縮し、給与が大きく下がった人について、2027年1月から標準報酬月額の判定に特別な取扱いを設ける予定も示しています。これは今後の施行予定であり、対象要件や実際の反映時期は加入する健康保険へ確認が必要です。

大切なのは、古い上限表を使わないことです。診療月が2026年7月以前、2026年8月~2027年7月、2027年8月以降のどこに当たるかで表が変わります。所得区分が同じ名称に見えても、上限額や区分の境界が同じとは限りません。

年間上限は、現在の年収を12か月で平均して判定する制度ではありません。まず各診療月の所得区分と月額上限を計算し、その後、8月~翌年7月の対象自己負担を積み上げます。詳しくは高額療養費2026・2027年改正|所得別上限・年間上限・多数回該当を参照してください。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

保険者へこの5点を聞けば区分を確認できる

窓口へ相談するときは、「私の上限はいくらですか」だけでなく、診療月と保険変更日を伝えます。

  1. 〇年〇月診療分は、どの医療保険で計算しますか
  2. 所得区分は何ですか。何年の所得またはどの標準報酬月額を使っていますか
  3. 退職・転職・扶養入りで区分が変わる日はいつですか
  4. 非自発的失業者の特例や住民税非課税区分を申請できますか
  5. 限度額情報へ反映済みですか。後日の高額療養費申請が必要ですか

マイナ保険証を使って限度額情報の提供に同意した場合も、保険者が登録している所得区分が基になります。現在の収入が減ったことを病院の受付へ伝えるだけで、区分がその場で変更されるわけではありません。

よくある疑問

退職して無収入になれば、翌月から住民税非課税区分になりますか?

必ずしもなりません。国保では前年・前々年所得を使うため、退職前の給与所得が判定に残ることがあります。非自発的失業者の特例に該当するか、市区町村へ確認してください。

高額療養費の「年収約」は源泉徴収票の支払金額ですか?

表の年収は目安です。会社の健康保険では標準報酬月額、国保では基礎控除後の総所得金額等を使うため、源泉徴収票の支払金額だけで区分を確定できません。

扶養に入れば、自分の収入が低いので上限も下がりますか?

扶養先が会社の健康保険なら、原則として被保険者の標準報酬月額等で判定します。被扶養者本人の収入だけで低所得区分になるわけではありません。

所得区分が間違っていると思うときは病院へ言えば直りますか?

所得区分を判定するのは医療機関ではなく保険者です。加入する健康保険、市区町村の国保窓口、後期高齢者医療広域連合へ確認します。訂正後に差額の申請が必要になる場合があります。

転職前と転職後の医療費は同じ月なら合算できますか?

保険者が変わった場合は、原則として別々に計算します。資格喪失日・取得日と、それぞれの保険者での支給対象額を確認してください。

まとめ:年収ではなく、診療月・加入保険・判定資料を見る

高額療養費の所得区分は、現在の手取りだけでは決まりません。会社の健康保険なら標準報酬月額、国保なら前年・前々年所得、後期高齢者医療なら課税所得や世帯の課税状況などを確認します。

退職・転職・扶養入り・75歳到達で保険が変わった人は、診療月と資格の切替日を整理し、新旧の保険者へ確認してください。非自発的失業者は、給与所得を30%として判定する特例の対象になる可能性があります。

この記事は公式資料を基にした一般的な制度案内です。個別の所得区分、支給額、保険資格は加入する保険者が決定します。

公式資料・関連記事

次に確認すること

制度は、対象・金額・期限・申請先の4点がそろって初めて動けます。次のページで残りを確認してください。

迷ったときの相談先

最終的な支給の可否・金額は、お住まいの市区町村の窓口、年金事務所、ハローワークなどの公的機関が判断します。当サイトは公式情報をもとに整理していますが、申請前に必ず窓口でご確認ください。制度の内容は変更されることがあります。

この記事の調査・編集について

調査・執筆・編集確認:カネさん(給付金プラス運営者)

2021年3月から、給付金・助成金・公的支援制度の情報発信を行っています。記事は、制度の実施機関が公開する案内・募集要項・申請書、所管省庁の法令・通知・公表資料、実施機関の公式FAQを確認して作成しています。AIは調査と構成の補助に使うことがありますが、公開前に運営者が公式資料と照合しています。

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