退職・休業で使える雇用保険の全制度|退職前・直後・受給中の確認リスト

仕事・失業

会社を辞めるときに確認する制度は、一般に「失業保険」と呼ばれる基本手当だけではありません。

在職中なら、介護休業給付、育児休業等給付、教育訓練休暇給付金、高年齢雇用継続給付を利用できる可能性があります。退職後には基本手当や高年齢求職者給付金、受給中には再就職手当や雇用保険の傷病手当が関係する場合もあります。

大切なのは、制度名を一つずつ覚えることではなく、退職前・退職直後・受給中のどこにいるかを確認することです。退職してからでは選びにくくなる制度もあります。

この記事では、雇用保険を中心とした主な支援を時系列で整理します。個別の支給可否は、勤務先、離職理由、年齢、雇用保険の加入期間などによって変わるため、最後は勤務先または住所地を管轄するハローワークで確認してください。

最初に確認する6項目

次の6項目を書き出すと、確認すべき制度を絞りやすくなります。

  1. まだ会社に在籍しているか、すでに退職したか
  2. 退職理由は自己都合、倒産・解雇、雇い止め、病気、介護などのどれか
  3. 退職後すぐに働ける状態か
  4. 退職時の年齢は65歳未満か、65歳以上か
  5. 資格取得や職業訓練を予定しているか
  6. すでに再就職先が決まっているか

「退職する」と決めていても、介護、育児、学び直し、60歳以降の賃金低下が理由なら、退職届を出す前に在職中の制度を確認してください。

退職前に確認する制度

家族の介護が理由なら、退職前に介護休業給付を確認する

介護休業給付は、家族の介護のために仕事を休む雇用保険の被保険者を支える制度です。一定の要件を満たすと、休業開始時賃金日額を基に算定した額の67%相当が支給されます。

同じ対象家族について、通算93日まで、3回を上限として分けて介護休業を取得できます。給付申請は通常、勤務先を通じて行います。

介護を理由に退職すると、在職を前提とした介護休業給付は利用できなくなります。まず勤務先の人事・労務担当に、対象家族、休業予定日、社内の申出期限を確認してください。

詳しい対象者、日数、申請先は、介護休業給付|家族の介護で休むときの対象・日数・申請先で確認できます。

育児で休む・時短勤務にするなら、育児休業等給付を確認する

育児関係の雇用保険給付には、出生時育児休業給付金、育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金があります。

育児休業給付金の給付率は、原則として休業開始から180日目までは67%、181日目以降は50%です。一定の要件を満たして夫婦ともに育児休業を取得する場合などは、出生後休業支援給付金が最大28日間上乗せされることがあります。2歳未満の子を養育するために時短勤務をする場合は、育児時短就業給付金の対象になる可能性があります。

「育休を取るか退職するか」で迷っている段階で、勤務先へ相談するのが安全です。詳しくは、育児休業給付は手取り10割相当?出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金を整理をご覧ください。

仕事を辞めずに学ぶなら、教育訓練休暇給付金を確認する

教育訓練休暇給付金は、雇用保険の一般被保険者が、勤務先の制度に基づいて30日以上の無給の教育訓練休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付を受けられる制度です。

本人が希望するだけで利用できる制度ではありません。勤務先に休暇制度があり、対象となる教育訓練について会社の承認を受ける必要があります。休暇開始前に、勤務先とハローワークの双方へ相談してください。

また、この給付を受けた後に離職する場合は、基本手当の算定で教育訓練休暇前の被保険者期間などが通算されない扱いがあります。将来の離職も考えている人は、休暇取得を決める前に影響を確認してください。

詳しくは、教育訓練休暇給付金|仕事を辞めずに学び直す人の対象・金額・申請方法で整理しています。

60歳以降も働き、賃金が下がったら高年齢雇用継続給付を確認する

高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上65歳未満で、雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、60歳時点などと比べて賃金が75%未満に下がった人が対象となる制度です。

60歳到達日などが2025年4月1日以降の人は、支給率の上限が各月の賃金の10%です。勤務先が申請する場合が多いため、給与が下がったら総務・給与担当へ確認してください。

対象条件と計算方法は、高年齢雇用継続給付|60歳以降に賃金が下がった人の対象・計算方法で確認できます。

退職直後に確認する制度

65歳未満で、すぐ働ける人は基本手当を確認する

基本手当は、退職しただけで自動的に支給されるものではありません。就職する意思と能力があり、積極的に求職活動をしていることなどが必要です。

離職票が届いたら、記載された離職理由を確認し、住所地を管轄するハローワークで求職申込みと受給資格決定の手続きを行います。自己都合退職の場合、2025年4月1日以降の退職は、7日間の待期後に原則1か月の給付制限があります。ただし、過去の退職状況や重責解雇などでは扱いが異なります。

対象となる教育訓練等を受ける場合は、給付制限が解除される可能性があります。詳しくは、自己都合退職の失業給付|給付制限は原則1か月、リスキリングで解除される条件をご覧ください。

65歳以上で離職した人は、高年齢求職者給付金を確認する

65歳以上の雇用保険被保険者が離職した場合は、一般の基本手当ではなく、高年齢求職者給付金の対象になることがあります。

被保険者期間に応じて、基本手当日額の30日分または50日分に相当する額を一時金として受け取る仕組みです。働く意思と能力があり、求職申込みを行うことなどが必要です。

詳しくは、高年齢求職者給付金|65歳以上で離職した人の30日分・50日分と申請期限で確認してください。

年金も受けている場合は、給付の種類によって調整方法が異なります。雇用保険と年金の調整|失業給付・高年齢雇用継続給付で年金が止まる条件もあわせて確認してください。

退職後すぐに働けない人は、受給期間延長を確認する

病気、けが、妊娠、出産、育児、親族の介護などで30日以上働けない場合は、基本手当をすぐ受けるのではなく、受給期間を延長できることがあります。

これは所定給付日数を増やす制度ではありません。働ける状態になってから残っている日数分を受けるために、受給できる期間を後ろへ延ばす制度です。

必要書類と手続きは、失業給付の受給期間延長|病気・妊娠・育児・介護で働けないときの手続きで整理しています。遅れると所定給付日数を受けきれない可能性があるため、働けない状態が続くと分かった時点でハローワークへ相談してください。

学び直す人が確認する制度

学び直しの制度は、在職中か離職後か、雇用保険の基本手当を受けられるかによって入口が変わります。

状況主に確認する制度
仕事を続けながら長期の無給休暇を取る教育訓練休暇給付金
指定講座の受講費を軽くしたい教育訓練給付金
自己都合退職後に対象訓練を受ける基本手当の給付制限解除
雇用保険を受給できず、職業訓練中の生活費が必要職業訓練受講給付金

教育訓練給付金は、厚生労働大臣の指定講座を受講・修了した人に、受講費用の一部を支給する制度です。講座の種類により給付率、上限、申請時期が異なります。

対象講座の調べ方は、教育訓練給付金とは?2026年版|資格講座・リスキリングの対象、支給額、申請期限を解説をご覧ください。

雇用保険の基本手当を受けられない求職者は、収入・資産・出席などの要件を満たせば、職業訓練受講給付金を受けながら無料の職業訓練を受講できる場合があります。

受給中に確認する制度と注意点

早く再就職したら、再就職手当を確認する

基本手当の受給資格決定後、所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職業に就くなど、一定の要件を満たすと再就職手当の対象になります。

支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら70%、3分の1以上なら60%が基本的な給付率です。早く就職しただけでは自動的に支給されないため、就職が決まった段階でハローワークへ連絡してください。

要件と申請期限は、再就職手当|早く就職するといくら?8つの要件・計算方法・申請期限で確認できます。

再就職後の賃金が下がったら、就業促進定着手当を確認する

再就職手当を受けた人が同じ勤務先に6か月以上雇用され、再就職後の賃金が離職前より低い場合は、就業促進定着手当の対象になる可能性があります。

申請期間があるため、再就職先で6か月を迎える前に、就業促進定着手当|再就職後に賃金が下がった人の条件・計算・2か月の期限を確認してください。

受給手続き後に病気やけがで働けなくなったら、雇用保険の傷病手当を確認する

ハローワークで求職申込みをした後、病気やけがで15日以上続けて働けなくなった場合は、基本手当に代えて雇用保険の傷病手当を受けられる可能性があります。

在職中に健康保険から支給される「傷病手当金」とは別制度です。また、長期間働けない場合は受給期間延長との比較が必要です。

詳しくは、雇用保険の傷病手当|失業中に15日以上働けないときの対象と申請方法をご覧ください。

アルバイト、内職、事業準備は認定日に申告する

基本手当の受給中に働いた日、収入を得た日、内職や事業準備をした日は、失業認定申告書への記載が必要になる場合があります。

働いた時間や収入によって、その日の基本手当が支給対象外になる、減額される、後の日へ繰り越されるなど扱いが変わります。自己判断で申告を省かず、雇用契約書、給与明細、働いた日と時間の記録を残してください。

一人に複数制度が関係する代表例

候補となる制度が複数あっても、すべてを同時に受け取れるとは限りません。制度の選択や申請順序が必要な場合があります。

ケース確認する順番
介護で退職を考えている介護休業給付→退職後すぐ働けるか→基本手当または受給期間延長
資格取得のために退職する教育訓練給付→基本手当→給付制限解除
仕事を辞めずに学ぶ教育訓練休暇給付金→教育訓練給付金の対象講座
60~64歳で賃金が下がった高年齢雇用継続給付→退職する場合は基本手当
65歳以上で離職した高年齢求職者給付金→年金との関係
基本手当の受給中に早く再就職した再就職手当→6か月後に就業促進定着手当
退職後に病気やけがで働けなくなった求職申込みの前後を確認→受給期間延長または雇用保険の傷病手当

特に60歳以降の再就職では、再就職手当と高年齢再就職給付金を同じ就職について両方受けることはできません。どちらを確認すべきか、就職の届出時にハローワークへ相談してください。

手続き前にそろえたいもの

制度によって必要書類は異なりますが、次の情報を手元に置いて相談すると話が進みやすくなります。

  • 雇用保険被保険者番号が分かる書類
  • 離職票-1、離職票-2
  • 雇用保険受給資格者証または受給資格通知
  • 退職日、休業開始日、再就職日が分かる書類
  • 直近の賃金明細
  • 本人確認書類、マイナンバー確認書類
  • 本人名義の振込口座情報
  • 病気、介護、育児、教育訓練などの事情を確認できる書類

離職票に記載された退職理由が実際と異なる場合は、会社から届いた記載だけで諦めず、事情を確認できる資料を持ってハローワークへ相談してください。

相談先を使い分ける

  • 基本手当、再就職手当、高年齢求職者給付金、教育訓練給付:住所地を管轄するハローワーク
  • 介護休業、育児休業、教育訓練休暇:まず勤務先の人事・労務担当。そのうえでハローワーク
  • 育児・介護休業法上の会社対応:都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
  • 年金との支給調整:年金事務所とハローワークの双方

窓口へ相談するときは、「失業保険について」だけでなく、「65歳以上で離職した」「介護で退職を考えている」「教育訓練を受ける予定」など、年齢と現在の状況を具体的に伝えてください。

まとめ|制度名より、いまの段階を確認する

退職・休業時の雇用保険は、次の順に確認すると整理しやすくなります。

  1. 退職前に使える休業・継続給付がないか
  2. 退職後すぐに働ける状態か
  3. 65歳未満か、65歳以上か
  4. 学び直しや早期再就職を予定しているか
  5. 受給中に働いた日や病気になった日がないか

一人に複数の制度が関係することは珍しくありません。ただし、候補が複数あることと、すべてを併給できることは別です。退職日や休業開始日を決める前に、勤務先とハローワークへ確認してください。

公式情報

※この記事は2026年8月3日時点の公表情報を基に整理しています。給付額の上限、必要書類、対象期間などは改定されることがあります。個別の支給可否は、勤務先または住所地を管轄するハローワークで確認してください。

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