家族それぞれの医療費が自己負担限度額に届いていなくても、同じ月の支払いをまとめると高額療養費の対象になることがあります。これが「世帯合算」です。
ただし、同居している家族なら何でも足せるわけではありません。基本となるのは、同じ医療保険に加入する被保険者と被扶養者です。70歳未満では、医療機関などの区分ごとに自己負担額が21,000円以上になったものだけを合算します。
この記事では、合算できる家族、21,000円の数え方、70歳以上の扱い、マイナ保険証で限度額を使った後の申請まで整理します。
最終確認日:2026年9月1日。自己負担限度額は2026年8月以降に改正されています。所得別の上限は高額療養費2026・2027年改正で確認してください。
2026年8月改正後も、協会けんぽの案内では、70歳未満の世帯合算に入れる自己負担額は区分ごとに21,000円以上です。上限額の改正と、合算対象を選ぶ21,000円基準を混同しないでください。
先に結論:世帯合算できるかの確認表
| 状況 | 世帯合算 |
|---|---|
| 会社の健康保険の被保険者と、その被扶養者 | 同じ診療月の対象額を合算できる |
| 同じ国民健康保険世帯の加入者 | 同じ診療月の対象額を合算できる |
| 同居しているが、夫婦がそれぞれ別の勤務先の健康保険に加入 | 原則として合算できない |
| 健康保険の本人と、国民健康保険に入る家族 | 保険者が異なるため合算できない |
| 同じ健康保険の被扶養者だが、進学などで別居している | 住所ではなく保険上の被扶養者かで判断する |
| 診療月が異なる | 月をまたいで合算できない |
協会けんぽは、世帯合算における「世帯」を、協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者と説明しています。住民票上の世帯だけで判断しないことがポイントです。
出典:協会けんぽ「高額療養費」
70歳未満は「21,000円以上」の自己負担だけを合算
70歳未満の人は、同じ月の保険診療について、決められた区分ごとに自己負担額を計算します。1つの区分が21,000円以上になった場合、その金額を世帯合算へ入れます。20,999円以下の区分は、原則として合算対象になりません。
この21,000円は、世帯全体の支払額や1か月分の領収書総額を見て判断する数字ではありません。受診者、医療機関、入院・外来、医科・歯科などに分けて確認します。
| 分けて計算するもの | 確認方法 |
|---|---|
| 受診者 | 夫、妻、子など一人ずつ分ける |
| 医療機関 | A病院、B病院など医療機関ごとに分ける |
| 入院と外来 | 同じ病院でも別々に計算する |
| 医科と歯科 | 同じ病院内でも別々に計算する |
| 調剤薬局 | 処方せんを出した医療機関の外来分へ加えて計算する |
| 診療月 | 毎月1日から末日まで。翌月分とは分ける |
たとえば、同じ月に同じ人がA病院の外来で15,000円を支払い、A病院の処方せんによる薬局で7,000円を支払った場合、合計22,000円として21,000円以上になる可能性があります。一方、A病院とB病院の外来がそれぞれ15,000円なら、2つを先に足して30,000円とはしません。
家族の医療費を合算する例
同じ健康保険に入る70歳未満の家族が、同じ月に次の自己負担をしたとします。
- 被保険者:A病院の入院で65,000円
- 被扶養者の配偶者:B病院の外来で28,000円
- 被扶養者の子:C歯科の外来で18,000円
65,000円と28,000円は、それぞれ21,000円以上なので合算対象です。合計93,000円を、その世帯に適用される自己負担限度額と比べます。子の18,000円は21,000円未満のため、この例では合算対象に入りません。
実際の支給額は、所得区分、医療費総額、公費負担、限度額の窓口適用などで変わります。領収書だけで支給額を断定せず、加入先に計算を依頼してください。
70歳以上は21,000円未満も合算できる
70歳以上の人は、保険診療の自己負担額をすべて合算できます。70歳未満のように、1つの区分が21,000円以上という基準はありません。
70歳から74歳の人が同じ国民健康保険世帯に複数いる場合は、まず個人ごとの外来上限を適用し、その後に世帯単位の上限を適用します。70歳以上と70歳未満が同じ医療保険世帯にいる場合は、70歳以上の対象額と、70歳未満の21,000円以上の対象額を合わせて計算します。
年齢の判定や75歳到達月には特例があります。家族に70歳・75歳の誕生日を迎える人がいる月は、加入先へ計算方法を確認してください。
出典:大阪市「高額療養費」
同居していても保険が違えば合算できない
世帯合算で間違えやすいのが、「家計が同じ」と「医療保険上の世帯が同じ」の違いです。
- 夫婦がそれぞれ勤務先の健康保険で被保険者になっている
- 親は後期高齢者医療、子は会社の健康保険に入っている
- 夫は会社の健康保険、妻は国民健康保険に入っている
このような場合、同居して生活費を一緒にしていても、医療保険が異なるため高額療養費では合算できません。
反対に、進学や単身赴任で別居していても、同じ被保険者の被扶養者として同じ健康保険に加入しているなら、世帯合算の対象になり得ます。資格情報のお知らせやマイナポータルで加入先を確認し、不明なときは保険者へ「被保険者と被扶養者として世帯合算できるか」と聞いてください。
なお、高額療養費では合算できない夫婦でも、税務上の医療費控除では、生計を一にし、実際に医療費を支払った人が家族分を合計できる場合があります。2つの「家族分をまとめる」は条件が異なるため、高額療養費と医療費控除は併用できる?も確認してください。
マイナ保険証で限度額を使っても申請が必要な場合がある
マイナ保険証や限度額適用認定証を使うと、原則として1つの医療機関等での窓口支払いを自己負担限度額までに抑えられます。しかし、別の医療機関や家族の支払いまで、その場で自動的に世帯合算されるとは限りません。
大阪市も、医療機関で支払った額が限度額までになっていても、同じ世帯の別の自己負担を合算すると上限を超える場合には、高額療養費の申請が必要だと案内しています。
次の月は、窓口で限度額を使った後も加入先へ確認してください。
- 同じ月に家族も高額な保険診療を受けた
- 複数の病院や薬局を利用した
- 入院と外来の両方に支払いがある
- 医科と歯科の両方を受診した
世帯合算の申請手順
- 同じ月に支払った家族全員の保険診療分を整理する。
- 対象者が同じ医療保険の被保険者・被扶養者か確認する。
- 70歳未満の分は、受診者・医療機関・入院外来・医科歯科で分ける。
- 調剤薬局分を、処方せんを出した医療機関の外来分へ加える。
- 21,000円以上になる区分をまとめ、加入先へ申請方法を確認する。
- 月ごとの高額療養費支給申請書を提出する。
会社の健康保険なら協会けんぽ支部または健康保険組合、国民健康保険なら市区町村、後期高齢者医療なら自治体窓口または広域連合が主な申請先です。協会けんぽでは、加入している支部へ申請します。
必要書類は保険者によって異なります。対象者の資格情報、診療月、医療機関名、自己負担額、振込先などを準備し、領収書の要否を確認してください。
支給決定までにはレセプト審査があるため、申請後すぐに振り込まれるとは限りません。加入先別の目安や問い合わせ方は、高額療養費はいつ振り込まれる?で整理しています。
合算できない費用
同じ月・同じ医療保険世帯でも、次の費用は原則として高額療養費の計算対象になりません。
- 入院時の食事代
- 差額ベッド代
- 先進医療の技術料
- 診断書などの文書料
- 自由診療や保険適用外の治療費
子ども医療費助成、ひとり親家庭等医療費助成、指定難病などの公費負担がある場合は、実際の自己負担額と保険者が計算に使う額が一致しないことがあります。助成を受けていることを申請先へ伝えてください。
対象外費用の確認方法は、高額療養費の対象外一覧|差額ベッド代・食事代・先進医療で詳しく解説しています。
「世帯合算」と「高額医療・高額介護合算」は別制度
| 制度 | まとめる費用 | 計算期間 |
|---|---|---|
| 高額療養費の世帯合算 | 同じ医療保険世帯の保険診療自己負担 | 毎月1日から末日 |
| 高額医療・高額介護合算療養費 | 医療保険と介護保険の自己負担 | 原則、毎年8月から翌年7月 |
名前は似ていますが、対象費用と計算期間が異なります。医療費と介護サービス費の両方が高い世帯は、高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算療養費も確認してください。
保険者へ確認するときの伝え方
○年○月に、同じ健康保険に入る家族が複数の医療機関を受診しました。高額療養費の世帯合算を確認したいです。受診者ごとの医療機関名、入院・外来、医科・歯科、薬局の自己負担額を伝えますので、合算対象と申請書を教えてください。
保険変更や扶養変更があった月は、資格取得日・資格喪失日も伝えます。月の途中で保険者が変わると、同じ月でも別々に計算される場合があります。
よくある疑問
同じ病院の領収書なら全部まとめられますか?
70歳未満では、同じ病院でも入院と外来、医科と歯科を分けて計算します。区分ごとに21,000円以上か確認してください。
夫婦が別々の会社の健康保険でも合算できますか?
それぞれが別の被保険者として加入している場合、原則として高額療養費の世帯合算はできません。加入する保険ごとに計算します。
薬局の支払いだけで21,000円以上なら対象ですか?
調剤薬局分は、処方せんを出した医療機関の外来自己負担と合わせて計算します。薬局単独で判断せず、処方元ごとに整理してください。
子どもの医療費助成を利用した分も合算できますか?
公費助成がある場合は計算方法が異なることがあります。助成前の医療費と実際の自己負担額が分かる書類を用意し、医療保険と自治体の両方へ確認してください。
世帯合算すると多数回該当の回数にも入りますか?
世帯合算の結果、高額療養費が支給された月は、多数回該当の判定に関係します。ただし、保険者が変わった場合などは回数を引き継げないことがあります。2026年・2027年の多数回該当と年間上限は、高額療養費2026・2027年改正で確認してください。
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世帯合算は、家族の領収書を単純に足す制度ではありません。同じ診療月、同じ医療保険、年齢、医療機関ごとの区分を確認し、対象になりそうな月は加入先へ申請してください。
この記事は公式資料を基にした一般的な制度案内です。合算対象、所得区分、支給額、必要書類は加入先の医療保険が判断します。


