老齢年金請求書が届いても、年金は自動では始まりません。ただし、届く書類は全員同じではありません。初めて老齢年金を請求する人の「年金請求書」と、すでに特別支給の老齢厚生年金を受けている人に届く「はがき型の請求書」では、提出できる日も期限も違います。
封筒を開けたら、まず書類名と提出期限を確認してください。そのうえで、65歳から受け取るのか、66歳以降へ繰り下げるのかを決めます。この記事では、届いた後の確認順を、2026年8月24日時点の日本年金機構の案内に沿って整理します。
先に確認する3点
- 届いたのは、複数ページの「年金請求書」か、はがき型の「年金請求書」か
- 提出できる日と提出期限はいつか
- 65歳から受け取るか、老齢基礎年金・老齢厚生年金の一方または両方を繰り下げるか
最初に、届いた請求書の種類を確認する
老齢年金に関係する主な請求書は、次の3種類です。見た目と送付時期が違うため、「65歳になる3か月前に必ず同じ書類が届く」とは限りません。
| 届く人 | 主な書類と送付時期 | 提出時期 |
|---|---|---|
| 65歳で初めて老齢年金を請求する人 | 加入記録が印字された複数ページの年金請求書。原則、受給開始年齢の3か月前 | 65歳の誕生日の前日以降 |
| 特別支給の老齢厚生年金を受給中の人 | はがき型の「年金請求書」。原則、65歳になる誕生月の初め | 誕生月の末日まで。1日生まれは前月末まで |
| 老齢年金を請求しないまま75歳になる人 | 年金請求書。原則、75歳になる1か月前 | 同封案内で確認 |
最後に加入していた厚生年金が共済組合の期間である場合などは、共済組合から請求書が届くことがあります。封筒の差出人と提出先も確認してください。
請求書が届いた日に確認する5項目
- 氏名・住所・基礎年金番号・生年月日に誤りがないか
- 国民年金・厚生年金・共済組合の加入記録に抜けや誤りがないか
- 提出できる日・提出期限・提出先がどこに書かれているか
- 電子申請の案内リーフレットが同封されているか
- 配偶者・子、他の年金、受取口座について追加書類が必要か
加入記録が違うと感じたときは、そのまま提出せず、ねんきん定期便、給与明細、源泉徴収票、国民年金保険料の領収書、当時の勤務先が分かる資料を集めます。先に年金事務所へ相談すると、確認すべき期間を絞りやすくなります。
初めて請求する人は、誕生日の前日から提出できる
65歳で初めて老齢年金を請求する人には、原則として65歳になる3か月前に年金請求書が届きます。早く届いても、65歳になる前には提出できません。
提出できるのは65歳の誕生日の前日以降です。年齢は法律上、誕生日の前日に到達するため、たとえば4月10日生まれなら4月9日から提出できます。4月1日生まれは3月31日に65歳へ到達します。
戸籍謄本や住民票などを添付する場合は、原則として受給権が発生した日以後に交付され、提出日に6か月以内のものを用意します。3か月前に請求書が届いた直後、添付書類まで取ってしまうと、取り直しになる場合があります。
紙の請求書は、同封案内に記載された年金事務所などへ提出します。国民年金だけに加入していた人など、手続き先が市区町村になる場合もあるため、送付先を自己判断で変えず、請求書の案内を優先してください。
特別支給の老齢厚生年金を受給中の人は、はがきの期限に注意する
特別支給の老齢厚生年金は65歳で終了します。65歳以後の老齢基礎年金・老齢厚生年金は別の年金なので、引き続き受け取るには改めて請求が必要です。
対象者には、原則として誕生月の初めに、はがき型の「年金請求書」が届きます。提出期限は誕生月の末日です。1日生まれの人は前月初めに届き、前月末が期限になります。提出が遅れると、年金の支払いが一時的に止まる場合があります。
年金生活者支援給付金の対象になると見込まれる人には、「年金請求書 兼 年金生活者支援給付金請求書」が届くことがあります。はがきの案内を確認し、郵送する場合は切手の貼り忘れにも注意してください。
必要書類は「本人分」と「状況別」に分けて確認する
必要書類は家族構成や加入記録によって変わります。最初からすべての戸籍や住民票を取るのではなく、請求書のチェックリストで自分に該当するものだけを確認します。
| 確認する項目 | 主な書類・注意点 |
|---|---|
| 生年月日 | 戸籍謄本・抄本、住民票など。日本年金機構にマイナンバーが登録されている人は、原則として省略できる場合があります |
| 受取口座 | 本人名義の通帳またはキャッシュカードのコピー。請求書に金融機関の証明を受けた場合はコピー不要 |
| 公金受取口座 | 登録済みの公金受取口座を使う場合は、金融機関の証明や通帳コピーを省略できます |
| 配偶者・子 | 戸籍、世帯全員の住民票、所得証明、生計同一関係を確認する書類など |
| 内縁・別居 | 生計同一関係を確認する申立書や第三者証明など |
| 他の年金・雇用保険 | 年金証書、雇用保険被保険者番号が分かる書類など |
マイナンバーを記入すれば、すべての添付書類が不要になるわけではありません。配偶者や子がいる場合、内縁・別居の場合、共済期間や他の年金がある場合は追加書類が必要になることがあります。
公金受取口座を年金の振込先に指定した後、マイナポータルで公金受取口座を変更しても、年金の振込先は自動では変わりません。年金の口座を変えるときは、日本年金機構へ受取機関変更届を提出します。
紙・窓口・電子申請のどれを選ぶか
紙で郵送する
同封案内に記載された提出先へ郵送します。送る前に請求書と添付書類のコピーを取り、発送日と追跡番号を残してください。はがき型の請求書と複数ページの請求書では送付先が違う場合があります。
窓口で提出する
加入記録、配偶者や子の加算、繰下げについて確認したい人は、年金事務所や街角の年金相談センターの予約相談が向いています。請求書一式、基礎年金番号が分かるもの、本人確認書類、相談内容をまとめたメモを持参します。
電子申請する
初めて老齢年金を請求する人のうち、電子申請の対象者には案内リーフレットが同封されます。マイナンバーカードと、署名用電子証明書の暗証番号(英数字6~16文字)が必要です。パソコンを使う場合は、ICカードリーダーが必要になることがあります。
すでに特別支給の老齢厚生年金を受けている日本国内居住者の65歳時請求も、2025年1月から電子申請の対象になりました。マイナポータルとねんきんネットを連携して手続きします。
電子申請の対象外となる記録や家族状況がある場合は、紙の提出を案内されます。電子申請後でも、雇用保険被保険者番号などを確認できないと、追加書類の郵送を求められる場合があります。
66歳以降に行う繰下げ請求は、電子申請できません。受け取りを始めたい時期に、紙の請求書を年金事務所または街角の年金相談センターへ提出します。
65歳から受け取るか、繰下げるかを決める
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から受け取れます。66歳以降へ繰り下げると、65歳から請求月の前月までの月数に応じ、1か月につき0.7%増額されます。増額は生涯続きます。
| 受取開始年齢 | 65歳開始との比較 |
|---|---|
| 65歳 | 増額なし |
| 66歳 | 8.4%増 |
| 70歳 | 42.0%増 |
| 75歳 | 84.0%増 |
75歳まで繰り下げられるのは、原則として1952年4月2日以後生まれなどの対象者です。生年月日や受給権が発生した時期により、上限が70歳になる人もいます。実際の増額率は、年単位ではなく請求した月で決まります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げられます。
- 両方を65歳から受け取る:65歳時の請求書を提出する
- 片方だけ繰り下げる:65歳時の請求書で、65歳から受け取る年金を選んで提出する
- 両方を繰り下げる:原則として65歳時には請求せず、受け取りたい時期に繰下げ請求する
はがき型の請求書では、老齢基礎年金だけ65歳から受け取る欄、老齢厚生年金だけ65歳から受け取る欄があります。両方を繰り下げる場合は提出しません。書類によって記入欄が違うため、同封の記入例で確認してください。
特別支給の老齢厚生年金そのものは繰り下げできません。受給開始年齢になったら早めに請求します。65歳以後の老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げるかどうかは、別に判断します。
繰下げを選ぶ前に、増額率以外も確認する
繰下げは、長く受け取れば総額が増える可能性があります。ただし、次の項目を見ないまま「84%増」だけで決めると、想定と違うことがあります。
- 繰下げ中の生活費:受取開始まで、年金以外の収入や貯蓄で暮らせるか
- 加給年金額・振替加算:繰下げによる増額の対象外で、待機中は受け取れない
- 働きながら受ける老齢厚生年金:在職老齢年金で支給停止になる部分は、繰下げ増額の対象にならない
- 他の年金:障害年金・遺族年金の受給権があると、繰下げできない場合がある
- 税・社会保険料:年金額が増えると、所得税、住民税、健康保険料、介護保険料に影響する場合がある
- 年金生活者支援給付金:所得要件の判定に影響する場合がある
受け取りを待っている間に亡くなった場合、遺族が本人に代わって繰下げ請求することはできません。未支給年金は原則65歳時点の年金額を基に計算され、5年の時効により受け取れない期間が生じることがあります。
日本年金機構は、66歳から74歳までの繰下げ待機者へ、年齢ごとの見込み額などを記載したお知らせを送っています。手取り額や家族分の加算まで含めて比較したい人は、ねんきんネットの試算と年金事務所の相談を利用してください。
請求書が届かない、紛失したときの対処
発送時期を過ぎても届かないときは、まず日本年金機構に登録された住所を確認します。引っ越し後の住所変更が反映されていない、共済組合から送られる対象だった、加入記録の確認が必要といった理由が考えられます。
請求書を紛失した場合は、日本年金機構のウェブサイトから様式をダウンロードできます。ただし、最初に届く請求書には本人の加入記録が印字され、提出先も個別に示されています。再作成前に、年金事務所またはねんきんダイヤルへ連絡し、使う様式と提出先を確認するのが確実です。
連絡するときは、基礎年金番号、生年月日、現在の住所、請求書が届くはずだった時期を手元に用意します。
提出後、初回振込までの目安
紙の年金請求書を提出すると、日本年金機構が加入記録、受給資格、添付書類、受取口座などを確認します。請求から年金証書・年金決定通知書が届くまでの目安は1~2か月です。その後、さらに1~2か月ほどで年金振込通知書が届き、初回の振込が行われます。
電子申請では、年金証書・年金決定通知書までの目安が約1か月と案内されています。どちらも、書類不足や加入記録の確認があると長引きます。
老齢年金は、受給権が発生した月の翌月分から支給対象になります。通常は偶数月の15日に前2か月分が振り込まれますが、初回は審査の完了時期によって複数月分がまとめて振り込まれることがあります。
通知が届いたら、年金振込通知書の見方で、振込額と控除額を確認してください。予定日を過ぎても入金がない場合は、年金が振り込まれないときの確認順も参考になります。
働きながら受け取る人は在職老齢年金も確認する
厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、賃金と老齢厚生年金の合計により、年金の一部が支給停止になることがあります。2026年度は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら老齢厚生年金は全額支給され、65万円を超えると、超過額の2分の1が支給停止の目安です。老齢基礎年金は支給停止の対象ではありません。
請求自体をしなくてよい制度ではありません。計算方法は在職老齢年金とは?2026年度の基準額65万円と減額の計算で確認できます。
年金生活者支援給付金は、年金とは別に確認する
年金生活者支援給付金は、公的年金などの収入や世帯の課税状況など、一定の要件を満たす人へ年金に上乗せして支給される制度です。老齢年金の請求書に給付金の請求欄がある人は、記入漏れがないか確認します。
対象要件と請求方法は、年金生活者支援給付金は誰がもらえる?【2026年度】で整理しています。
迷ったときの相談先
請求書の種類、加入記録、必要書類、繰下げの選び方が分からないときは、年金事務所または街角の年金相談センターへ相談します。窓口相談は予約しておくと待ち時間を減らせます。
- ねんきんダイヤル:0570-05-1165
- ナビダイヤルを利用できない場合:03-6700-1165
電話番号や受付時間は変更される場合があります。電話する前に、日本年金機構の「ねんきんダイヤル」のページで最新情報を確認してください。
公式情報
- 日本年金機構「老齢年金の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「65歳時の年金の手続き」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給している方が65歳になったとき」
- 日本年金機構「老齢年金請求書の電子申請」
- 日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「在職老齢年金制度」
- 日本年金機構「ねんきんダイヤル」
※制度内容は2026年8月24日時点。提出先、必要書類、電子申請の可否、繰下げできる年齢は、生年月日、加入記録、家族状況、他の年金の受給権などで異なります。最終確認は、届いた請求書の案内と日本年金機構で行ってください。


