老齢年金の繰上げ・繰下げ|増減率と、取消しできない前に確認すること

老齢年金の繰上げ・繰下げについて、受給時期・年金額・注意点を示す図 年金・社会保険

老齢年金は、受け取り始める年齢を早めることも遅らせることもできます。早めれば1か月ごとに減額され、遅らせれば1か月ごとに増額されます。どちらも一度決めると原則やり直せません

まず確認|決める前に見落としていないか

繰上げも繰下げも、一度決めると原則やり直せません。「何歳まで生きるか」だけでは決まらない要素があります。

Q1 加給年金や振替加算の対象になりますか?

なる加給年金や振替加算は繰下げの増額対象になりません。繰下げ待機中は加給年金も受け取れません。配偶者の年齢によっては、繰下げが不利になることがあります。
ならないQ2へ進みます。

Q2 65歳以降も働く予定はありますか?

ある在職老齢年金により、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。支給停止された分は繰下げの増額対象にもなりません。
ないQ3へ進みます。

Q3 医療・介護の自己負担割合を確認しましたか?

まだ年金額が増えると、医療費や介護費の自己負担割合が上がる場合があります。手取りベースで比較してください。

Q4 障害年金や遺族年金を受ける可能性はありますか?

ある繰上げ受給をすると、障害年金・遺族年金の請求に制限がかかる場合があります。健康に不安がある方は特に慎重に判断してください。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰上げ・繰下げを選べる場合があります。繰下げ待機中に亡くなった場合、未支給年金として遺族が請求できる仕組みもあります。判断に迷う場合は年金事務所で試算を依頼してください。

繰上げと繰下げの比較

繰上げ受給繰下げ受給
受け取り開始60歳から65歳になるまでの間66歳から75歳までの間
増減率1か月あたり減額1か月あたり0.7%増額。75歳まで待つと最大84%増
取消しできない。減額された額が一生続くできない。増額された額が一生続く
見落としやすい点障害年金・遺族年金の請求に制限がかかる場合がある加給年金や振替加算は増額の対象にならない。医療・介護の自己負担割合が上がる場合がある

損得は「何歳まで生きるか」だけでは決まりません。加給年金の有無、在職老齢年金による支給停止、健康保険料や介護保険料への影響、配偶者の年金との組み合わせによって結論が変わります。

  • 繰下げ待機中に亡くなった場合、未支給年金として遺族が請求できる仕組みがあります
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰上げ・繰下げを選べる場合があります
  • 判断に迷う場合は年金事務所で試算を依頼できます

繰上げ受給|60歳から受け取る場合の減額

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ります。ただし、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰上げ請求できます。

繰上げ受給は、早く年金を受け取れる一方で、年金額が減ります。減額率は一生変わらず、請求した後に「やっぱり65歳からに戻したい」と取り消すこともできません。生活費の不足を補う方法として検討する場合も、年金事務所で見込額を確認してから決めます。

減額率は生年月日で異なる

昭和37年4月2日以降生まれの人は、繰上げる1か月につき0.4%減額されます。60歳から受け取る場合は、65歳までの60か月を繰上げるため、最大24%の減額です。

昭和37年4月1日以前生まれの人は、原則として1か月につき0.5%の減額率が適用され、60歳からの繰上げでは最大30%減額されます。実際の減額率は、生年月日と請求時期で確認します。

例えば、65歳時点の年金額を月10万円と仮定した場合、0.4%の世代が60歳から繰上げると、単純計算では月7万6,000円です。0.5%の世代なら月7万円です。これは説明用の計算であり、実際の年金額には加入記録や加算、支給停止などが影響します。

繰上げ請求後は取り消せない

日本年金機構は、繰上げ請求後の取り消しや変更はできないと案内しています。請求した日の翌月分から支給され、減額された年金を生涯受け取ることになります。

「数年だけ早く受け取って、65歳になったら本来の額に戻る」という制度ではありません。早く受け取る期間と、将来の毎月の減額を比較する必要があります。

任意加入や追納ができなくなる

繰上げ請求をすると、国民年金の任意加入や、過去の免除期間などの保険料の追納ができなくなります。60歳以降に任意加入して年金額を増やしたい人は、繰上げ請求の前に順番を確認します。

この点は、60歳からの生活費を確保したい人ほど見落としやすい注意点です。繰上げを申請する前に、未納・免除・納付済期間が何か月あるかを確認してください。

障害年金や遺族年金への影響

繰上げ請求後は、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を請求できない場合があります。治療中の病気や持病がある人は、年金の繰上げだけを見て判断しないことが重要です。

また、65歳になるまでの間、遺族厚生年金などと同時に受け取れず、どちらかを選ぶことになる場合があります。繰上げ請求後は寡婦年金が支給されないという注意点もあります。

働きながら受け取る場合

繰上げた老齢厚生年金は、65歳になるまでの間に雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付を受けると、一部または全部が支給停止になる場合があります。老齢基礎年金の扱いは異なるため、雇用保険を受ける予定がある人は、厚生年金と基礎年金を分けて確認します。

65歳以降も働く場合は、在職老齢年金の支給停止が関係することがあります。給与、賞与、年金額が分かる資料を用意し、年金事務所で試算を受けます。

繰上げ前の確認項目

  • 65歳からの年金見込額と、繰上げ後の年金額
  • 何歳まで働く予定か、雇用保険を受ける予定があるか
  • 任意加入や追納を使う可能性があるか
  • 治療中の病気や障害年金の請求可能性がないか
  • 配偶者の年金や遺族年金との関係
  • 年金額が減った後の税金・医療保険料・介護保険料への影響

繰上げ受給が「得かどうか」は、受給開始年齢だけで決まりません。長期の生活費、健康状態、働き方、他の年金との関係を一緒に確認してください。

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公的資料

原則として、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求します。特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の特例に当たる人は「一部繰上げ」になる場合があるため、基礎年金だけ・厚生年金だけを自己判断で選べるとは限りません。4月1日生まれは65歳に達する日を誕生日の前日として月数を数えるなど、請求月の扱いでも減額率が変わるため、請求前に年金事務所で確認してください。日本年金機構「年金の繰上げ受給」

繰下げ受給|0.7%増額と75歳まで待つ場合

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ります。ただし、希望すれば66歳から75歳になるまでの間で繰下げ請求でき、受け取り開始を遅らせるほど年金額が増えます。

繰下げ受給は、年金額を一生涯増やせる一方で、その間は年金を受け取れません。増額率は請求時の年齢で決まり、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げることもできます。加給年金・振替加算の扱いや、働きながら受け取る場合の在職老齢年金、待機中に亡くなった場合の未支給年金など、繰上げ受給とは違う注意点も多いため、年金事務所で見込額を確認してから決めます。

増額率は0.7%×月数、最大84%

繰下げ受給の増額率は「0.7%×繰下げた月数」で計算されます。65歳になった月の翌月から繰下げ請求をした月の前月までの月数が対象になり、66歳0か月で請求すると8.4%、70歳0か月で請求すると42.0%、75歳0か月で請求すると84.0%の増額となります。この増額率は一度決まると一生変わりません。

上限年齢は生年月日によって異なります。昭和27年4月2日以後生まれの方は75歳まで繰下げでき、最大84%の増額を受けられます。一方、昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳が上限で、最大42%までです。

たとえば、65歳時点の年金額(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計)が年額180万円の方が70歳まで繰下げた場合、42.0%増額されて年額約255.6万円になります。75歳まで繰下げた場合は84.0%増額されて年額約331.2万円です。これは説明用の計算であり、実際の年金額には加入記録や加算、支給停止などが影響します。

繰下げ請求は待機期間の途中でいつでも行えます。たとえば68歳3か月まで待機してその時点で請求すれば、その月数分(0.7%×39か月=27.3%)の増額で受け取りを始められます。65歳から66歳になるまでの1年間は繰下げの対象にならず、繰下げ請求ができるのは66歳以後です。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げできる

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰下げる必要はなく、それぞれ別々に繰下げ時期を選べます。たとえば「老齢基礎年金は70歳まで繰下げて増額し、老齢厚生年金は65歳から通常どおり受け取る」といった組み合わせも可能です。

この仕組みは、加給年金や振替加算の扱いと関係してきます。たとえば老齢厚生年金だけを65歳で受け取り始めれば、配偶者がいる場合の加給年金は本来の時期から受け取りながら、老齢基礎年金だけを繰下げて増額を狙う、といった選択ができます。どちらか一方だけ繰下げる場合と、両方同時に繰下げる場合とで受給額のシミュレーションが変わるため、年金事務所やねんきんネットで組み合わせごとの見込額を確認しておくと判断しやすくなります。

加給年金・振替加算は繰下げ待機中は受け取れない

老齢厚生年金の繰下げ待機中は、配偶者や子がいる場合に上乗せされる加給年金額を受け取ることができません。同様に、配偶者の老齢基礎年金に上乗せされる振替加算も、繰下げ待機中は支給が止まります。しかも、加給年金額や振替加算額そのものは繰下げによる増額の対象になりません。つまり、繰下げている間は「もらえないだけ」で、後から増えて戻ってくるものでもないのです。

このため、加給年金の対象になる配偶者や子がいる方が老齢厚生年金の繰下げを検討する場合は、繰下げによる増額分と、繰下げ待機中に受け取れなくなる加給年金の合計額を比較しておく必要があります。加給年金額は年額で数十万円になることもあり、待機期間が長くなるほど「受け取れなかった加給年金」の総額も大きくなります。年金事務所で、繰下げた場合と65歳から受け取った場合の両方の見込額を出してもらい、比較してから判断することをおすすめします。

働きながら繰下げる場合の在職老齢年金

厚生年金保険に加入しながら働いている方が老齢厚生年金の繰下げを待機している間、賃金と年金の合計額が一定の基準を超えると、在職老齢年金の仕組みにより老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。この支給停止される部分は、繰下げによる増額の対象になりません。

つまり、在職老齢年金で本来なら支給停止されるはずだった金額は、繰下げても増えずに、そのまま「支給停止分」として扱われます。増額されるのは、支給停止の影響を受けない部分だけです。働きながら繰下げを検討している方は、「繰下げれば全額が増える」と思い込まず、在職老齢年金の基準額と自分の見込み給与・年金額を照らし合わせて、実際にどれだけ増額されるのかを年金事務所で確認しておくと安心です。

繰下げ待機中に亡くなったら?未支給年金と5年前みなし請求

繰下げを待機している間に本人が亡くなった場合、増額された年金を遺族が代わりに受け取れるわけではありません。この場合、亡くなった方の年金は65歳時点にさかのぼって年金額が決定され、本来受け取るはずだった期間分が「未支給年金」として、生計を同じくしていた配偶者や子などの遺族に一括で支払われます。繰下げによる増額は反映されません。

一方、本人が生きているうちに66歳以後、70歳以後に65歳の時点までさかのぼって年金を請求する場合は、令和5年4月から「特例的な繰下げみなし増額制度」が導入されています。70歳以後に請求する場合、請求の5年前の日に繰下げ受給の申し出をしたものとみなして増額された年金を一括で受け取れる仕組みで、時効により古い分が消滅する不利益を軽くする内容です(昭和27年4月2日以後生まれの方などが対象)。繰下げるつもりで待機していたものの、体調の変化などで途中から「やはりさかのぼって一括で受け取りたい」と考えるケースもあるため、この選択肢があることは知っておくとよいでしょう。

税金・社会保険料への影響

繰下げ受給で年金額が増えると、その分だけ所得税・住民税の課税対象額が増える可能性があります。公的年金等控除の範囲内であれば税負担は抑えられますが、増額によって課税対象になったり、税率区分が上がったりする場合もあります。

さらに、国民健康保険料や介護保険料は前年の所得を基準に計算されるため、年金額の増加によって保険料が上がることがあります。医療費の自己負担割合の判定基準にも所得が影響するため、繰下げによる増額が思ったより手取りの増加につながらないケースもあります。繰下げを検討する際は、額面の増額率だけでなく、税金・保険料を差し引いた手取りベースでどう変わるかも合わせて確認しておくと安心です。

繰下げ前の確認項目

  • 老齢基礎年金・老齢厚生年金それぞれの繰下げ待機期間中の見込額を、年金事務所やねんきんネットで確認したか
  • 加給年金・振替加算の対象になる配偶者や子がいるか、いる場合は待機中に受け取れなくなる金額を把握したか
  • 働きながら受け取る予定がある場合、在職老齢年金による支給停止の見込みを確認したか
  • 繰下げた場合の年金額をもとに、税金・国民健康保険料・介護保険料がどの程度増えるかを試算したか
  • 途中で気が変わった場合に、通常の65歳請求やさかのぼり請求(5年前みなし請求を含む)に切り替えられることを理解しているか
  • 老後の生活費を、繰下げ待機中の期間はどのように賄うか具体的に決めているか

まとめ

繰下げ受給が「得かどうか」は、増額率の高さだけでは決まりません。加給年金・振替加算の扱い、働き方による支給停止、税金や社会保険料への影響、そして万一のときの未支給年金の仕組みまで含めて、自分の年金記録と生活設計に照らして確認してください。

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日本年金機構の現行案内では、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げでき、原則として1か月ごとに0.7%増額されます。昭和27年4月2日以後生まれなどの方は75歳まで・最大84%が目安ですが、生年月日等により70歳まで・最大42%となる区分があります。また、在職老齢年金で支給停止された老齢厚生年金の部分は繰下げ増額の対象外です。基礎年金と厚生年金を同じ時期に繰下げるか分けるか、年金事務所で試算してください。日本年金機構「年金の繰下げ受給」

公的資料

公式情報・相談先

  • 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
  • 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
  • お近くの年金事務所・街角の年金相談センター
  • ねんきんダイヤル

※本記事は2026年8月25日時点で確認できる日本年金機構の公表資料をもとに整理しています。増減率や取扱いは改正されることがあります。請求前に必ず年金事務所へご確認ください。

次に確認すること

制度は、対象・金額・期限・申請先の4点がそろって初めて動けます。次のページで残りを確認してください。

迷ったときの相談先

最終的な支給の可否・金額は、お住まいの市区町村の窓口、年金事務所、ハローワークなどの公的機関が判断します。当サイトは公式情報をもとに整理していますが、申請前に必ず窓口でご確認ください。制度の内容は変更されることがあります。

この記事の調査・編集について

調査・執筆・編集確認:カネさん(給付金プラス運営者)

2021年3月から、給付金・助成金・公的支援制度の情報発信を行っています。記事は、制度の実施機関が公開する案内・募集要項・申請書、所管省庁の法令・通知・公表資料、実施機関の公式FAQを確認して作成しています。AIは調査と構成の補助に使うことがありますが、公開前に運営者が公式資料と照合しています。

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