妊娠・出産に関する支援は、ひとつの窓口へまとめて申請する仕組みではありません。市区町村、健康保険、勤務先、ハローワークで手続きが分かれます。
最初に確認するのは、住民票のある市区町村、加入している健康保険、雇用保険への加入状況です。会社員か、自営業・フリーランスか、健康保険の本人加入か扶養かによって、受け取れる制度が変わります。
妊娠から子育てまでの確認表
| 時期 | 主な制度 | 支援内容の目安 | 主な申請・相談先 |
|---|---|---|---|
| 妊娠確認後 | 妊婦のための支援給付 | 1回目5万円 | 住民票のある市区町村 |
| 出産予定日の8週間前以降 | 妊婦のための支援給付・2回目 | 胎児の数×5万円 | 住民票のある市区町村 |
| 産前・産後に会社を休む | 出産手当金 | 標準報酬日額の3分の2相当 | 勤務先、加入する健康保険 |
| 出産時 | 出産育児一時金 | 子ども1人につき原則50万円 | 出産施設、加入する健康保険 |
| 出生後 | 児童手当 | 月1万円~3万円 | 市区町村、公務員は勤務先 |
| 育児休業中 | 育児休業給付金 | 180日目まで67%、以後50% | 勤務先、ハローワーク |
| 出生直後に夫婦で育休 | 出生後休業支援給付金 | 最大28日間、13%を上乗せ | 勤務先、ハローワーク |
| 2歳未満の子のために時短勤務 | 育児時短就業給付金 | 時短勤務中の賃金の原則10% | 勤務先、ハローワーク |
| ひとり親になった | 児童扶養手当 | 所得・子の人数で変動 | 市区町村 |
このほか、妊婦健診費用の助成、子どもの医療費助成、産後ケア、保育料の軽減などがあります。これらは自治体によって対象、名称、自己負担が異なります。
妊娠が確認されたら:妊婦のための支援給付
妊婦のための支援給付は、妊娠期の相談支援と組み合わせて市区町村が実施する制度です。2025年度に法定給付として始まり、2026年度も実施されています。
給付は2回に分かれます。
- 1回目:妊婦給付認定後に5万円
- 2回目:妊娠しているこどもの人数の届出後に、胎児の数×5万円
この制度でいう妊娠は、医療機関で胎児心拍が確認されたことが基準です。1回目は妊娠確認後、2回目は出産予定日の8週間前の日から申請できます。流産・死産・人工妊娠中絶の場合も対象になり得るため、住民票のある市区町村へ確認してください。
申請方法や支給時期は自治体によって異なります。妊娠届や面談の案内を受けたときに、本人確認書類、振込口座が分かるもの、母子健康手帳など、必要なものを確認します。
会社を休む人:出産手当金
出産手当金は、健康保険の被保険者本人が、出産のために会社を休み、その期間の給与を受けられないときの所得保障です。健康保険の扶養に入っている人や、原則として国民健康保険の加入者は対象ではありません。
対象期間は、出産日以前42日から出産日の翌日以後56日までです。多胎妊娠は産前98日から対象になります。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間も含まれます。
1日当たりの支給額は、原則として支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均を30日で割り、その3分の2に相当する額です。給与が一部支払われる場合は、出産手当金との差額だけが支給されることがあります。
申請書には、本人、勤務先、医師または助産師が記入する欄があります。支給対象となる各日の翌日から2年で時効になるため、出産後に勤務先や健康保険の案内に従って申請します。
出産手当金と傷病手当金は同じ期間について重ねて満額を受け取れません。傷病手当金の方が高い場合は、差額が支給されることがあります。
出産費用:出産育児一時金は原則50万円
出産育児一時金は、公的医療保険の加入者が出産したとき、子ども1人につき原則50万円が支給される制度です。妊娠85日以上の出産が対象で、流産・死産なども含まれます。
多くの出産施設では直接支払制度を利用できます。健康保険から出産施設へ一時金が直接支払われるため、窓口では出産費用から一時金を引いた差額を支払います。出産費用が一時金より少なかった場合は、健康保険へ差額を請求できます。
直接支払制度を利用しない場合などの申請期限は、出産日の翌日から2年です。出産施設との合意書、出産費用の領収・明細書、出生を確認できる書類などを求められることがあります。
出産費貸付制度は返済が必要
出産育児一時金が支給される前に費用が必要な人には、出産費貸付制度があります。協会けんぽでは出産育児一時金の8割相当が上限で、無利子です。
これは追加でもらえる給付ではありません。後日支給される出産育児一時金から返済される貸付です。直接支払制度を利用できる場合は、貸付が必要かを先に健康保険へ相談してください。
育児休業中:3つの雇用保険給付を確認する
雇用保険の被保険者が育児休業を取得し、休業開始前の2年間に一定の被保険者期間があるなどの要件を満たす場合は、育児休業給付の対象になります。
育児休業給付金
育児休業給付金は、原則として休業開始から180日目までは休業開始前賃金の67%、181日目以降は50%です。原則1歳未満の子の育児休業が対象で、保育所に入れないなど一定の場合は最長2歳まで延長できます。
休業中に勤務先から賃金を受ける場合や、就業日数が多い場合は、減額または不支給になることがあります。
出生後休業支援給付金
子の出生直後の一定期間に、原則として夫婦ともに14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たすと、最大28日間、休業開始前賃金の13%が上乗せされます。通常の67%と合わせた給付率は80%で、社会保険料免除などを含めて「手取り10割相当」と説明されます。
給付率80%が、そのまま休業前の額面給与と同額になるわけではありません。賃金の支払い、上限額、休業日数などで実際の金額は変わります。
育児時短就業給付金
2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮し、賃金が下がるなどの要件を満たした場合は、時短勤務中の各月の賃金の原則10%が支給されます。賃金と給付の合計が時短開始前の賃金を超えないよう、支給率が調整されます。
育児休業は、原則として開始予定日の1か月前までに勤務先へ申し出ます。給付の申請先は事業所を管轄するハローワークで、通常は勤務先が手続きを行います。母子健康手帳など出生を確認できる書類、賃金台帳、出勤簿、配偶者の状況を確認する書類などが必要です。
子どもが生まれたら:児童手当を15日以内に申請
児童手当は、0歳から高校生年代までの子を養育する人が対象です。所得制限はありません。
| 子どもの年齢 | 1人当たりの月額 |
|---|---|
| 3歳未満 | 1万5,000円。第3子以降は3万円 |
| 3歳以上、高校生年代まで | 1万円。第3子以降は3万円 |
支給は偶数月の年6回で、それぞれ前月分までの2か月分が支払われます。
出生後は、現住所の市区町村へ認定請求を行います。公務員は原則として勤務先へ申請します。児童手当は原則、申請月の翌月分からです。月末近くの出生でも、出生日の翌日から15日以内に申請すれば、出生日の翌月分から受け取れる特例があります。里帰り出産でも、里帰り先ではなく現住所の市区町村へ申請します。
認定請求書、請求者名義の口座情報、マイナンバー、健康保険の資格情報などを用意します。第3子の数え方に18歳年度末を超えた兄姉を含める場合は、監護相当・生計費負担についての確認書が必要になることがあります。
自営業・フリーランスは育休給付の代わりを確認する
雇用保険に入っていない自営業者やフリーランスは、原則として育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金の対象ではありません。
一方、国民年金第1号被保険者には、2026年10月から1歳未満の子を養育する期間の国民年金保険料を免除する制度が始まります。所得制限はなく、要件を満たせば父母とも対象です。
免除期間も老齢基礎年金の計算上は納付済みとして扱われます。開始前の制度なので、2026年10月以降の申請方法と受付時期は、市区町村の国民年金窓口または年金事務所で確認してください。
ひとり親・収入減・自治体独自支援も確認する
離婚、死別、父または母に一定の障害があるなどの要件を満たす場合は、児童手当とは別に児童扶養手当を受けられることがあります。所得制限があり、ひとり親であることだけでは支給が決まりません。
子どもの医療費助成、妊婦健診、産後ケア、保育料、学校給食費などは、市区町村独自の対象や自己負担が設定されています。「市区町村名+子ども医療費助成」「市区町村名+産後ケア」で公式サイトを確認してください。
退職後、妊娠・出産・育児で30日以上すぐに働けない人は、失業給付を直ちに受けるのではなく、受給期間延長の手続きが必要になる場合があります。
申請漏れを防ぐチェックリスト
- 妊娠届の提出時に、妊婦のための支援給付の申請方法を確認する
- 出産施設で、出産育児一時金の直接支払制度を利用するか決める
- 産前休業に入る前に、出産手当金と育児休業の社内手続きを確認する
- 配偶者と育休を取る場合は、出生後休業支援給付金の条件を勤務先へ確認する
- 出生後15日以内に児童手当を申請する
- 時短勤務を選ぶ場合は、育児時短就業給付金の対象か確認する
- 自治体の子ども医療費助成、産後ケア、保育料軽減を確認する
妊娠・出産の支援は、自動で支給されるとは限りません。特に妊婦のための支援給付の2回目、児童手当、出産育児一時金の差額請求は、本人側の申請や届出が必要です。
用意しておきたい書類
- 本人確認書類、マイナンバーが分かるもの
- 振込先口座が分かるもの
- 母子健康手帳、出産予定日や出生を確認できる書類
- 健康保険の資格情報、雇用保険被保険者番号
- 出産費用の領収書・明細書、直接支払制度の合意書
- 勤務先の休業申出書、賃金台帳や出勤簿に関する証明
- 出産手当金支給申請書の医師・助産師証明
- 配偶者の育児休業や就労状況を確認する書類
必要書類は、制度、加入する健康保険、勤務先、自治体によって異なります。原本が必要か、写しでよいか、オンライン申請ができるかも提出先へ確認してください。
最初の相談先
- 妊婦のための支援給付、児童手当、子ども医療費助成:住民票のある市区町村
- 出産育児一時金、出産手当金:加入している健康保険、勤務先
- 育児休業、育児時短勤務:勤務先
- 育児休業等給付:勤務先、事業所を管轄するハローワーク
- 国民年金の育児免除:市区町村の国民年金窓口、年金事務所
- 退職後の失業給付:住所地を管轄するハローワーク
窓口では「妊娠何週か」「出産予定日」「健康保険は本人加入か扶養か」「雇用保険に入っているか」「産休・育休・退職のどれを予定しているか」を伝えると、対象制度を確認しやすくなります。
公式情報
- こども家庭庁「妊婦のための支援給付・妊婦等包括相談支援事業」
- こども家庭庁「妊婦のための支援給付のご案内」
- 厚生労働省「出産育児一時金等について」
- 協会けんぽ「出産手当金」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 厚生労働省「働くママの育児について」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 日本年金機構「2026年10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります」
確認日:2026年8月3日。対象、支給額、申請期限、必要書類は、出産日、加入する健康保険、雇用保険の加入期間、給与、休業日数、家族構成、自治体の運用などで異なります。最終的には市区町村、加入する健康保険、勤務先、ハローワークで確認してください。


