従業員ごとに「育休復帰支援プラン」を作り、3か月以上の育児休業と職場復帰を支えた中小企業は、2026年度(令和8年度)の両立支援等助成金を申請できる可能性があります。育児休業を取得した段階で30万円、同じ従業員が職場復帰して6か月以上継続して雇用された段階で30万円です。
この「育児休業等支援コース」を受け取るのは、育児休業を取った従業員本人ではなく、休業前の面談、業務の引き継ぎ、休業中の情報提供、復帰前の面談まで行った中小企業事業主です。育休の申出を受けてから準備を始めると間に合わない項目があるため、面談とプランの期限を先に確認してください。
| 制度名 | 両立支援等助成金・育児休業等支援コース |
|---|---|
| 主な対象 | 育休復帰支援プランに基づき、従業員の育休取得と職場復帰を支えた中小企業事業主 |
| 育休取得時 | 30万円 |
| 職場復帰時 | 30万円 |
| 支給回数 | 各区分とも1事業主2回まで。無期雇用労働者・有期雇用労働者について各1回 |
| 情報公表加算 | 2万円、育休取得時または職場復帰時のいずれか1回 |
| 申請先 | 本社等の所在地を管轄する都道府県労働局 |
育児休業等支援コースは取得時と復帰時の2段階
| 区分 | 会社の主な取組 | 支給額 | 申請時期 |
|---|---|---|---|
| 育休取得時 | 休業前に面談と個別プランを作り、業務の引き継ぎを行った上で、対象者が連続3か月以上の育児休業を取得 | 30万円 | 産後休業開始日または育児休業開始日から3か月経過後、2か月以内 |
| 職場復帰時 | 休業中に職場情報を提供し、復帰前に面談。原職等へ復帰させ、6か月以上継続雇用 | 30万円 | 育児休業終了日の翌日から6か月経過後、2か月以内 |
職場復帰時の30万円は、同じ対象労働者の同じ育児休業について、先に育休取得時の助成金を受給した場合に申請できます。復帰だけを切り離して30万円を申請する制度ではありません。
支給対象は中小企業事業主のみです。資本金・出資額または常時雇用する労働者数の基準は業種で異なるため、厚生労働省の2026年度手引きにある「中小企業事業主の範囲」を確認します。
1事業主2回まで、無期と有期で各1回
育休取得時と職場復帰時は、それぞれ1事業主2回まで申請できます。内訳は、雇用期間の定めがない労働者について1回、有期雇用労働者について1回です。雇用期間の定めがあるかどうかは、育休復帰支援プランを作った時点で判断します。
- 無期雇用労働者の育休取得時:1回30万円
- 有期雇用労働者の育休取得時:1回30万円
- 上記と同じ対象者の職場復帰時:それぞれ1回30万円
- 育児休業等に関する情報公表加算:2万円、いずれか1回限り
同じ会社で働く父母が同じ子について育児休業を取得した場合は、2026年度Q&Aで、それぞれについて申請可能とされています。ただし、無期・有期の支給回数上限や、それぞれの面談・プラン・育休実績を満たす必要があります。
育休取得時は連続3か月以上が必要
育休取得時の30万円では、対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得していることが必要です。産後休業から続けて育児休業を取得した場合は、産後休業を含めて連続3か月以上なら対象になり得ます。
- 育休復帰支援プランで取得・復帰を支援する方針を、休業開始前に全労働者へ書面等で周知する
- 対象者と面談し、面談シートに育休期間、引き継ぎ、復帰後の働き方などを記録する
- 面談結果をもとに、対象者ごとの育休復帰支援プランを作る
- プランに基づいて、休業前に業務の整理と引き継ぎを行う
- 育児休業と育児短時間勤務の制度を、労働協約または就業規則へ具体的に定める
- 一般事業主行動計画を策定・届出・公表・周知する
- 休業開始日に対象者を雇用保険被保険者として雇用している
育児休業中に一時的に働いた日がある場合は、すべての月について就業日数が10日以下、10日を超えるときは就業時間が80時間以下などの扱いを確認します。労使合意に基づかない就業や、恒常的・定期的な就業は育児休業と認められません。
面談・プラン・引き継ぎは休業開始前に終える
このコースで最も確認したいのは、育休が始まる前の日付です。次の取組は、対象労働者の休業開始日の前日までに終えておきます。
| 休業の取り方 | 面談・プラン・引き継ぎの期限 |
|---|---|
| 産前休業から産後休業・育児休業を連続取得 | 産前休業開始日の前日まで |
| 産後休業から育児休業を連続取得 | 産後休業開始日の前日まで |
| 上記以外 | 育児休業開始日の前日まで |
支援方針は、今回の対象者だけを支援するという内容ではなく、今後も育休取得希望者ごとにプランを作って支援する会社の方針として明文化します。就業規則、社内報、イントラネットなど、日付と周知範囲を確認できる方法を使います。
すでに通常の引き継ぎを終えた後でプランを作り、その引き継ぎをプランの実施として扱うことはできません。面談、プラン作成、引き継ぎが同じ順序でつながっていることを、日付入りの記録で示せるようにします。
育休復帰支援プランに書く2つの内容
育休復帰支援プランには、少なくとも次の2項目を盛り込みます。
- 業務の整理と引き継ぎ:休止・縮小できる仕事、引き継ぐ仕事、担当者、マニュアル作成、引き継ぎ日程
- 休業中の情報・資料の提供:職場の組織変更、業務マニュアル、月報、研修資料などを、いつ、どの方法で届けるか
プランの目的は書類を埋めることではありません。育休に入る人の仕事を棚卸しし、残る従業員の負担が偏らないよう引き継ぎ方を決め、本人が休業中も必要な情報にアクセスできるようにするための実施計画です。
厚生労働省は育休復帰支援プランと面談シートの参考様式を公開しています。参考様式を使っても、助成金で求められる項目や日付が抜けていれば対象外になるため、自社の育休日程と実際の引き継ぎ内容を記録してください。
育休取得時の申請期限は3か月経過後の2か月以内
| ケース | 3か月の起算日 | 申請期間 |
|---|---|---|
| 産後休業から育児休業を連続取得 | 産後休業開始日 | 起算日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内 |
| 産後休業を取らず育児休業のみ取得 | 育児休業開始日 | 起算日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内 |
| 産後休業と育児休業が連続していない | 育児休業開始日 | 起算日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内 |
育児休業が長く続く場合でも、育休の終了を待ってから申請するわけではありません。育休終了前に育休取得時の申請期限が来ることがあります。対象者の休業開始日を決めた段階で、3か月経過日と申請期限をカレンダーへ入れておきます。
郵送申請は消印日ではなく、労働局への到着日で判断されます。簡易書留など配達記録が残る方法を使い、期限内必着で提出します。
職場復帰時は原職等への復帰と6か月雇用
職場復帰時の30万円では、育休中から復帰後までの支援が確認されます。
- プランに基づき、休業中に職務・業務内容に関する情報や資料を提供する
- 職場復帰前に上司または人事労務担当者が面談し、面談シートへ記録する
- 原則として、休業前の部署・職務である原職、または原職相当職へ復帰させる
- 復帰日から6か月以上、支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用する
- 一般事業主行動計画が申請日時点で有効である
原職相当職は、職務の関連性、勤務する事業所、職制上の地位などから判断されます。育児との両立を理由に本人が希望して別の事業所や職務へ復帰する場合は、復帰前面談で本人の希望を確認できるようにします。
育児休業を取ったことや育児短時間勤務を利用することを理由に、本人が希望しない雇用形態や給与形態への変更を強いる場合は、職場復帰時の要件を満たさない可能性があります。復帰前後の雇用契約、職務、賃金、所定労働時間を比較できるようにしておきます。
職場復帰時の申請期限は復帰後6か月の翌日から2か月
職場復帰時の申請期間は、育児休業終了日の翌日から数えて6か月を経過する日の翌日から2か月以内です。たとえば7月15日に育児休業を終え、7月16日に復帰した場合、翌年1月16日から3月15日までが申請期間の目安になります。
育児休業中に次の子の産前・産後休業が始まった場合は、次の子の産前・産後休業開始日から6か月を数える扱いがあります。連続して別の産休・育休へ入る場合は、2026年度Q&Aと管轄労働局で起算日を確認してください。
情報公表加算は2万円
「両立支援のひろば」の一般事業主行動計画公表サイトで、男性・女性の育児休業取得割合と男女別の平均取得日数を公表するなどの要件を満たすと、2万円を加算できます。
- 育休取得時または職場復帰時のいずれかの申請へ加算する
- 1事業主につき1回限り
- 加算だけを単独で申請することはできない
- 自社サイトだけで公表した場合は対象外
他の両立支援等助成金のコースで同名の情報公表加算を受給していても、このコースの加算を別に1回受けられる場合があります。
出生時両立支援コースとの違い
| コース | 中心となる取組 | 対象となる主な育休 |
|---|---|---|
| 育児休業等支援コース | 対象者ごとの育休復帰支援プラン、3か月以上の育休、休業中の情報提供、職場復帰 | 男女を問わず、要件を満たす育児休業 |
| 出生時両立支援コース | 男性が育休を取りやすい雇用環境・業務体制の整備 | 男性が子の出生後8週間以内に開始する育児休業など |
| 育休中等業務代替支援コース | 周囲の従業員への代替手当、または代替要員の新規雇用 | 育休中の業務代替が行われる育児休業 |
同じ労働者の同じ育児休業について、育児休業等支援コースと出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得」は併給できません。どのコースで申請するかを、育休開始前に支給額だけでなく必要な取組と日程で比較してください。
従業員本人が受け取る育児休業給付や出生後休業支援給付は、雇用保険から本人へ支給される別制度です。会社向け助成金と本人向け給付を混同しないようにします。
申請に必要な主な書類
- 育児休業等支援コース支給申請書
- 支給要件確認申立書
- 育休復帰支援面談シートと育休復帰支援プラン
- プランで支援する方針と周知日を確認できる就業規則、社内報、イントラネット画面など
- 育児休業・育児短時間勤務を確認できる労働協約、就業規則、労使協定
- 雇用期間の定めを確認できる雇用契約書、労働条件通知書
- 育児休業申出書、期間変更申出書
- 休業期間と復帰後の勤務を確認できる出勤簿、タイムカード、賃金台帳
- 休業中に職務・業務情報を提供した日付と内容を確認できるメール、資料、掲示画面
- 子の出生を確認できる母子手帳、住民票など
- 一般事業主行動計画策定届と、公表・周知を確認できる資料
職場復帰後に在宅勤務をする場合は、勤務日と始業・終業時刻を確認できる業務日報なども必要です。申請先は、人事労務管理の機能を持つ本社等の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
申請までの流れ
- 会社が中小企業事業主の範囲に入るか確認する
- 育児休業・育児短時間勤務の規定と一般事業主行動計画を確認する
- 育休復帰支援プランで取得・復帰を支える方針を全労働者へ周知する
- 対象者と面談し、面談シートへ記録する
- 個別の育休復帰支援プランを作り、休業前に業務を整理・引き継ぐ
- 3か月以上の育児休業を確認し、育休取得時を申請する
- 休業中に職場情報を提供し、復帰前に面談する
- 原職等へ復帰させ、6か月以上継続雇用した後に職場復帰時を申請する
対象外につながりやすい確認漏れ
- 育休復帰支援プランによる支援方針を休業開始前に周知していない
- 面談やプラン作成より前に、通常の引き継ぎを終えている
- プランに業務の整理・引き継ぎ、または休業中の情報提供が書かれていない
- 育児休業が連続3か月に達していない
- 就業規則に育児休業と育児短時間勤務の具体的な規定がない
- 休業中に職場情報を提供した日付と内容を確認できない
- 復帰前面談を行っていない、または本人の希望を記録していない
- 本人の希望によらず雇用形態・給与形態・職制上の地位を不利に変更した
- 育休取得時と職場復帰時の申請期限を取り違えた
- 郵送書類が期限までに労働局へ到着していない
この助成金では、育児休業の取得実績だけでなく、休業前・休業中・復帰前・復帰後の会社の支援が一続きで確認されます。面談シート、プラン、引き継ぎ記録、情報提供メール、出勤簿、賃金台帳の日付を、申請前に同じ時系列で並べてください。
公式情報・申請資料
- 厚生労働省「両立支援等助成金」
- 厚生労働省「2026年度 両立支援等助成金支給申請の手引き」
- 厚生労働省「育児休業等支援コース Q&A(2026年度版)」
- 厚生労働省「育休復帰支援プラン策定のご案内」
- 厚生労働省「仕事と家庭の両立支援プランナー」
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※本記事は2026年8月24日時点の厚生労働省公式情報をもとに作成しています。支給の可否は、事業主の規模、面談・プラン・引き継ぎの実施時期、育児休業期間、休業中の情報提供、復帰後の職務・雇用・賃金、過去の受給歴、雇用関係助成金の共通要件などを含めて都道府県労働局が判断します。申請前に最新の支給要領・申請様式をご確認ください。


