病院の支払期限が先に来るのに、高額療養費の払い戻しはまだ先。その間の医療費を用意する方法の一つが、高額医療費貸付制度です。
協会けんぽでは、高額療養費の支給見込額の8割相当を無利子で借りることができます。医療費の請求額の8割がもらえる制度ではなく、後日の給付で清算する「借りる支援」です。
確認日:2026年9月4日。この記事は協会けんぽの制度を中心に説明します。国民健康保険・健康保険組合・共済組合などでは、制度の有無や条件を加入先へ確認してください。
支払いが難しいときは、この順番で確認する
貸付を申し込む前に、窓口で立て替える金額を減らせないか確認します。限度額の適用と貸付では、家計への働き方が違います。
| いまの状況 | 最初に確認すること |
|---|---|
| これから高額な医療費を支払う | 医療機関へ、マイナ保険証などによる限度額情報の確認で、窓口負担を抑えられるか尋ねる |
| 高額療養費の支給が見込まれるが、当座の医療費が不足する | 加入先へ高額医療費貸付制度の利用を相談する |
| 限度額までの自己負担や対象外費用も支払えない | 病院の医療相談窓口に相談し、加入先では減免・猶予など別の支援の有無を確認する |
限度額の適用については、限度額適用認定証は必要?マイナ保険証との違いを参照してください。国保の方は、一部負担金の減免・徴収猶予も相談先を探す手がかりになります。
「8割」は、病院の請求額ではなく支給見込額に掛ける
貸付額の基になるのは、保険者が確認する高額療養費の支給見込額です。病院の請求書の合計に、そのまま0.8を掛ける計算ではありません。
たとえば、高額療養費の支給見込額が20万円と確認されたケースで、8割相当の貸付を受けるとします。
| 段階 | 金額の例 |
|---|---|
| 高額療養費の支給見込額 | 20万円 |
| 先に借りる額 | 20万円×80%=16万円 |
| 後日、20万円の支給が決まった場合 | 16万円を返済に充て、残り4万円を受け取る |
編集部作成の仮定例です。20万円は特定の年齢・所得区分から算出した額ではありません。実際の支給見込額・貸付額は協会けんぽが確認します。
この例で受け取るお金は、先の16万円と後の4万円を合わせて20万円です。貸付16万円とは別に、給付20万円をそのまま受け取れるわけではありません。
食事代、差額ベッド代、先進医療の技術料など、高額療養費の対象外となる費用は、支給見込額の計算にも原則入りません。請求書を見ながら、高額療養費の対象外費用と分けて確認してください。
制度の根拠:協会けんぽ「高額療養費」内の「高額医療費貸付制度」
対象者と申込みに必要な書類
協会けんぽの高額療養費の支給が見込まれる医療費について、加入先の支部へ相談します。被扶養者の医療費を含む場合も、被保険者の資格情報と受診した家族の情報を分けて準備してください。
協会けんぽのFAQでは、高額療養費支給申請書と、貸付に必要な次の書類を提出するよう案内しています。
- 高額療養費支給申請書
- 高額医療費貸付金貸付申込書
- 高額医療費貸付金借用書
- 医療機関の領収書または請求書
領収書や請求書がない場合は、支部にある「医療費請求書」を医療機関に記載してもらう方法が案内されています。保険点数が分かる資料を求められるため、金額だけのメモで代用できるとは考えず、支部へ必要な様式を確認してください。
高額療養費は診療月ごとの申請です。月をまたぐ入院では、対象年月を分けて書類を準備します。記入の際は、高額療養費支給申請書の書き方・必要書類も確認できます。
いつ借りられる?高額療養費の支給時期とは別に確認する
協会けんぽは、高額療養費の支給にはレセプトの確認が必要で、診療月から3か月以上かかると案内しています。これは高額療養費の支給時期であり、貸付金の入金日を示すものではありません。
今回確認した全国向けの貸付案内には、「申込みから全国一律で何日後に入金」という期限は示されていません。今日申し込めば病院の支払期限に間に合う、と決めつけないでください。
支部への相談では、病院の支払期限を先に伝え、貸付の手続き、必要書類、不備がない場合の入金見込みを尋ねます。間に合うか分からない場合は、病院の会計・医療相談窓口にも支払方法を相談してください。支払猶予が認められるかは病院などの判断になります。
通常の払い戻しが遅れている場合は、高額療養費はいつ振り込まれる?で確認事項を整理しています。
返済は後日の給付と清算する。支給額が減ると追加返済もある
高額療養費の支給が決まると、その給付を貸付金の返済に充て、残額が指定口座に振り込まれます。借りた金額を返済に充てる前の給付額と、実際の入金額を混同しないようにしましょう。
前の例と同じく16万円を借りた場合、最終的な支給額によって清算は次のように変わります。
| 最終的な支給額の例 | 貸付16万円との清算 |
|---|---|
| 20万円 | 16万円を返済し、残り4万円を受け取る |
| 18万円 | 16万円を返済し、残り2万円を受け取る |
| 14万円 | 給付だけでは2万円不足するため、その不足額を別途返す |
| 不支給(0円) | 給付では清算できないため、貸付16万円を返す |
清算の仕組みを示す仮定例であり、個別の支給・返済決定ではありません。
協会けんぽは、減額・不支給などで貸付金を返済できない場合や不足がある場合、返納通知書を送り、期日までの返納を求めると説明しています。無利子は「返済不要」という意味ではありません。通知額や期限に疑問があるときは、放置せず支部へ確認してください。
2026年8月改正後は、診療月に合う支給見込額で確認する
高額療養費は2026年8月診療分から月額上限が見直され、年間上限も設けられました。一方、2026年9月4日に確認した協会けんぽの貸付案内では、支給見込額の8割相当・無利子の仕組みが案内されています。
古い上限表で支給見込額を自己計算し、その金額を借りられると決めないでください。診療月、所得区分、世帯合算、多数回該当、すでに窓口で限度額が適用されたかによって確認が必要です。年間上限額そのものに8割を掛ける計算でもありません。
改正後の上限は、高額療養費2026・2027年改正まとめで確認できます。
よくある疑問
まだ病院へ支払っていなくても相談できますか?
協会けんぽは提出書類に領収書だけでなく請求書も挙げています。支払い済みでないことだけを理由に相談を諦めず、請求額と支払期限を伝えてください。請求書があるだけで貸付が決まるわけではありません。
高額療養費を電子申請すれば、貸付も申し込んだことになりますか?
高額療養費の支給申請と貸付の申込みは分けて確認します。高額療養費本体が電子申請に対応していても、貸付申込書・借用書の提出まで自動で済むとは判断できません。支部へ貸付を希望することを伝え、組み合わせる提出方法を確認してください。
国民健康保険でも8割・無利子で借りられますか?
この記事の8割・無利子は協会けんぽの案内です。国保の方は市区町村、健保組合・共済の方は各組合へ、貸付制度の有無と利用条件を確認してください。別の保険者の様式をそのまま提出しないようにします。
相談前に、この5点をメモしておく
- 医療を受けた年月と、そのときの医療保険の加入先
- 病院・薬局からの請求額と支払期限
- すでに支払った額、まだ支払っていない額
- マイナ保険証などによる限度額適用の有無
- 高額療養費の申請状況と、手元にある請求書・領収書
高額医療費貸付制度は、払い戻しまでの時間差を埋める選択肢です。まず窓口負担を抑えられるかを確認し、それでも当座の医療費が不足する場合は、支払期限を伝えて加入先へ相談してください。貸付の可否・金額・入金時期・返済方法は、保険者が確認・決定します。


