家賃、税金、電気代、カードの返済。全部を払うと食費が残らないとき、請求書ごとに対応しているだけでは、家計全体の立て直しが難しくなります。
家計改善支援事業は、収入と支出、滞納、借金を一緒に整理し、何をいつ支払うか、どの制度や窓口を使うかを考える公的な相談支援です。
ただし、相談すると現金が支給されたり、借金が免除されたりする制度ではありません。家計表や支払計画を作り、必要に応じて給付・減免・分納相談・法律相談・貸付へつなぐ仕組みです。
家計改善支援事業は「家計簿の付け方」だけを教える制度ではない
厚生労働省は、家計状況を「見える化」して根本的な課題を把握し、支援計画の作成、相談支援、関係機関への接続、必要に応じた貸付のあっせんを行う事業と説明しています。
家計簿を付けて節約額を探すだけではありません。次のような問題を一枚の家計表にまとめ、生活が続く支払計画を考えます。
| 困っていること | 家計改善支援で行うことの例 |
|---|---|
| 毎月赤字になる | 収入、固定費、返済、臨時支出を整理する |
| 家賃や公共料金を滞納している | 期限と金額を確認し、担当窓口への相談順を考える |
| 税金や社会保険料を払えない | 分納、猶予、減免などを担当部署へ相談する準備をする |
| 借入先が複数ある | 借入残高と返済額を整理し、多重債務相談や法律専門家へつなぐ |
| 使える制度が分からない | 給付、手当、保険料軽減、住まい・就労支援を確認する |
| 数か月後の支払いが不安 | キャッシュフロー表で将来の収支を見通す |
支援の目的は、相談員が永久に家計を管理することではありません。相談者が自分で収入、支出、返済、今後の大きな出費を把握し、再び困ったときに早めに相談できる状態を目指します。
失業者だけでなく、働いている人も相談できる
生活に困っている原因は失業だけではありません。
- 働いているが、収入だけでは生活費と返済を賄えない
- 病気や介護で勤務時間が減った
- 離婚、死亡、入院などで世帯収入が急に変わった
- 家賃、税金、国民健康保険料を滞納している
- 借金の返済に別の借金を使っている
- お金の管理に不安があり、請求書を開けられない
このような場合も相談できます。相談段階で、特定の給付金の所得要件を満たしている必要はありません。
最初の窓口は地域の自立相談支援機関です。生活困窮者自立支援制度の総合記事では、住まい、家計、仕事、子どもの支援を含む相談先をまとめています。
相談しても自動的にお金が出るわけではない
家計改善支援事業そのものが行うのは、家計の整理と継続的な相談支援です。
| できること | 原則としてできないこと |
|---|---|
| 家計表やキャッシュフロー表の作成 | 現金を一律に支給する |
| 滞納や返済の優先順位を整理する | 税金や借金を自動的に免除する |
| 利用できる制度と相談窓口を探す | 債権者との法的な交渉を代行する |
| 分納・減免相談の準備をする | 必ず貸付を受けられるようにする |
| 法律相談や多重債務窓口へつなぐ | 裁判や債務整理の結果を保証する |
給付、減免、貸付、債務整理にはそれぞれ要件と審査があります。家計改善支援を利用したことだけで、別制度の利用が決まるわけではありません。
相談は「一番近い期限」を確認するところから始まる
支払いが何件もある場合、最初から完璧な家計簿を作る必要はありません。まず、期限が迫っているものを相談員へ伝えます。
「3日後に電気が止まる」 「家賃を2か月滞納し、退去について書かれた通知が届いた」 「税金の差押えに関する書類が届いた」 「裁判所から封筒が届いたが、まだ開けていない」
支払期限、供給停止予定日、裁判所への回答期限などを確認したうえで、食費、住まい、医療を含む生活の維持に必要な支出を整理します。
裁判所、自治体、電力・ガス・水道事業者、家主や管理会社から届いた書類は捨てずに持参してください。期限が分からない場合は、封筒ごと見せると確認しやすくなります。
家計改善支援の基本的な流れ
地域によって面談方法や支援期間は異なりますが、一般的には次の順で進みます。
- 収入、支出、滞納、借金、家族状況を聞き取る
- 請求書や通帳を見ながら家計表を作る
- 今月だけでなく数か月先の収支を確認する
- 給付、減免、分納、就労、住まいなど利用できる制度を探す
- 必要に応じて自治体の担当課、社会福祉協議会、法テラスなどへつなぐ
- 面談を続け、計画どおり進んでいるか見直す
収入が増えなくても、保険料の軽減や分納、契約の見直し、利用できる手当への申請によって、毎月の不足額が変わる場合があります。反対に、返済額が収入に対して大きすぎる場合は、節約だけでは解決できず、法律相談が必要になります。
税金・国保・年金保険料の滞納は担当部署へつなぐ
家計改善支援員が税金や保険料を免除するわけではありません。滞納先と金額を整理し、自治体や年金事務所へ相談する準備をします。
確認する項目は次のとおりです。
- 何年度・何月分を滞納しているか
- 督促状、催告書、差押予告など何が届いているか
- 一括納付が難しい理由と、毎月支払える金額
- 収入急減、失業、病気、災害など減免や猶予に関係する事情
- すでに分納の約束をしているか
失業後に国民年金保険料を払えない場合は、国民年金保険料の免除・納付猶予を確認します。会社都合の離職など一定の条件に当てはまる場合は、国民健康保険料の非自発的失業者軽減も対象になる可能性があります。
減免、猶予、分納の条件は自治体や制度によって異なります。督促状を放置せず、書類に書かれた担当部署へ相談してください。
家賃を滞納しているときは住まいの支援も確認する
収入減少などで家賃を払えない場合は、家計改善だけでなく住まいの支援を同時に確認します。
住居確保給付金には、収入や資産などの要件があります。すでに滞納した家賃がすべて支給される制度ではありませんが、今後の家賃負担を支える選択肢になる場合があります。
退去期限が書かれた通知や裁判所からの書類がある場合は、そのことを最初に伝えます。家主や管理会社との契約問題について法的判断が必要な場合は、法律相談へつないでもらいます。
借金がある場合は、残高と毎月の返済額を一覧にする
借入先が複数あるときは、次の項目を分かる範囲で書き出します。
- 借入先の名称
- 借入残高
- 毎月の返済額と返済日
- 金利
- 滞納の有無
- 保証人や担保の有無
- 裁判所や債権回収会社からの連絡
借入先や残高が分からない場合も、そのまま相談できます。金融庁は、貸金業者、クレジット会社、銀行の借入情報について、それぞれの信用情報機関へ開示を求める方法を案内しています。開示には手数料がかかる場合があります。
家計改善支援員は家計と返済可能額を整理しますが、任意整理、自己破産、個人再生などの法律判断や債権者との交渉は、弁護士・司法書士などの専門家へ相談します。金融庁も財務局、自治体、法テラス、弁護士会などの多重債務相談窓口を案内しています。
貸付は給付金ではなく、返済が必要
家計改善支援では、必要に応じて生活福祉資金などの貸付をあっせんすることがあります。しかし、相談した全員が借りられるわけではありません。
貸付前には、借りた後の家計と返済可能性を確認します。すでに返済が収入を上回っている状態で新たな借入を増やすと、状況が悪化するおそれがあります。
緊急小口資金・総合支援資金は原則として返済が必要です。総合支援資金は借金の借り換えを目的とする制度ではなく、多重債務がある場合は専門相談を案内されることがあります。
「ブラックでも必ず借りられる」「審査なし」といった勧誘は、公的な支援ではありません。個人間融資を避ける確認項目も確認してください。
生活費そのものが足りない場合は生活保護も相談する
家計を見直し、利用できる給付や減免を確認しても、食費、家賃、医療費など最低限の生活費を確保できない場合があります。
この場合は、家計改善支援だけで解決しようとせず、福祉事務所へ生活保護も相談します。生活保護の対象と申請方法の記事では、収入・資産・扶養照会と申請後の流れを整理しています。
家計改善支援を利用したことや、働いていることだけで生活保護を申請できなくなるわけではありません。
相談時に持っていくとよい書類
最初の相談では、手元にあるものだけで構いません。
- 給与明細、年金通知、手当など収入が分かるもの
- 預貯金通帳や口座の入出金履歴
- 家賃、電気、ガス、水道、通信費などの請求書
- 税金、国民健康保険料、年金保険料の納付書や督促状
- クレジットカード、消費者金融、銀行ローンなどの利用明細
- 賃貸借契約書や退去に関する通知
- 裁判所、債権回収会社、法律事務所から届いた書類
- 医療費、介護費、学費など今後増える支出が分かるもの
書類が全部そろうまで相談を先延ばしにする必要はありません。支払期限や供給停止、退去、裁判所への回答期限が迫っている場合は、期限を先に伝えてください。
相談に全国共通の締切はないが、個別の支払いには期限がある
家計改善支援事業の相談に、給付金のような全国共通の申請期限は示されていません。
ただし、住居確保給付金、保険料の減免、裁判手続き、公共料金の支払相談などには、それぞれ期限や条件があります。督促や停止通知が届いてから時間がたつほど、選べる対応が少なくなることがあります。
今月は払えても来月から赤字になると分かった段階で相談できます。滞納額が大きくなるまで待つ必要はありません。
最初の相談では3つの数字を伝える
細かい家計簿を作れない場合は、まず次の3つを伝えます。
- 世帯の毎月の手取り収入
- 今月中に支払う必要がある合計額
- 現在使える預貯金と現金
あわせて、「いつ」「何が止まる、失われる、期限になるのか」を伝えます。相談員と家計表を作り、給付、減免、分納、住まい、就労、法律相談の順を組み立てます。
地域の窓口が分からない場合は、市区町村へ「生活困窮者自立支援制度の家計改善支援を相談したい」と問い合わせます。住まいも不安定な場合は、厚生労働省の「すまこま。」から地域の相談先を確認できます。
公式情報
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
- 厚生労働省「家計改善支援事業の手引き」
- 厚生労働省「自治体担当者・支援員の皆さまへ」
- 住まい・生活の困りごと相談「すまこま。|家計改善支援事業」
- 金融庁「多重債務についての相談窓口」
- 厚生労働省「総合支援資金貸付に関するQ&A」
※家計改善支援事業の窓口名、面談方法、利用できる支援、関係機関との連携方法は自治体によって異なります。給付、減免、貸付、債務整理の対象や結果は、各制度・専門機関が個別に判断します。


