生活保護は誰が申請できる?収入・資産・扶養照会と決定まで

住まい・生活

生活費が尽きそうでも、「働ける年齢だから無理」「持ち家があるから無理」「親族に知られる」と考え、生活保護の相談をためらう人がいます。

しかし、働いている人、住む場所がない人、必要書類がそろっていない人も申請できます。持ち家や自動車も、事情によって保有が認められる場合があります。同居していない親族へ先に相談することも申請の条件ではありません。

生活保護を利用できるかは、年齢や職業だけでは決まりません。世帯の収入、資産、働ける状況、年金や手当などを確認し、厚生労働大臣の定める最低生活費と比べて判断されます。

生活保護は「収入がゼロの人だけ」の制度ではない

生活保護は世帯単位で判定されます。厚生労働省は、世帯の収入が最低生活費に満たない場合、その差額を保護費として支給すると説明しています。

計算の基本は次のとおりです。

比較するもの 内容
最低生活費 地域、世帯人数、年齢、家賃、障害などをもとに計算
世帯の収入 給与、年金、手当、親族からの援助など
保護費 最低生活費から認定された収入を差し引いた額

最低生活費は地域や世帯構成で変わります。一律の「年収○万円以下」という表だけで、対象外とは判断できません。

給与を得ていても、世帯の収入が最低生活費に届かなければ対象になる可能性があります。一方、収入が少なくても、すぐ生活費へ充てられる預貯金などが十分にあれば、まずその資産の活用を求められます。

申請できるか迷いやすい5つのケース

1. 働ける年齢、または働いている

働ける年齢という理由だけで申請できなくなるわけではありません。働くことが可能な人は能力に応じて働くことが求められますが、求職中、収入が少ない、病気や家族の介護で働き方に制約があるなど、実際の状況を含めて判断されます。

2. 持ち家がある

生活に利用していない土地や家屋は、売却して生活費へ充てることが原則です。ただし、現在住んでいる家は保有が認められる場合があります。住宅ローンの有無や不動産の価値なども関係するため、持ち家だけで申請を諦めず、福祉事務所へ確認してください。

3. 自動車がある

自動車は処分が原則ですが、障害のある人の通勤・通院、公共交通機関が使いにくい地域での生活、通勤用の車を保有しながら求職している場合など、事情によって例外が認められる可能性があります。車種や利用目的、地域事情を個別に確認します。

4. 住所や必要書類がない

住む場所がない人も申請できます。通帳、本人確認書類、賃貸借契約書などが手元になくても、書類がそろうまで申請できないわけではありません。現在いる場所の近くにある福祉事務所へ、住まいがないことを最初に伝えます。

5. 家族に頼れない

親族から援助を受けられる場合は、その援助が生活保護に優先します。しかし、同居していない親族へ自分で相談してからでなければ申請できない、という制度ではありません。

扶養照会は申請の前提条件ではない

申請後の調査では、福祉事務所が親族から援助を受けられるか確認することがあります。これが扶養照会です。

ただし、親族が援助できないことだけを理由に生活保護を受けられなくなるわけではありません。また、DVや虐待の経緯がある、長く音信不通である、著しく関係が悪化しているなど、扶養を求めることが本人の自立を妨げる事情がある場合は、直接照会しない扱いになることがあります。

親族へ連絡されることで危険が生じる場合は、申請時に「誰へ、なぜ連絡してほしくないか」を具体的に伝えてください。事情を説明せずに我慢すると、福祉事務所が危険性を把握できないことがあります。

相談・申請窓口は福祉事務所

生活保護の相談・申請先は、現在住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所を設置していない町村では、町村役場でも申請手続きを行えます。

生活に困っている事情を相談するだけでなく、申請する意思が決まっている場合は、「生活保護を申請したい」と伝えます。

生活困窮者自立支援制度の窓口で家計や仕事の相談をした後でも、生活保護は申請できます。自立相談支援を利用することは、生活保護を申請しない約束ではありません。

申請後に確認されること

福祉事務所は、保護の要否と支給額を決めるため、主に次の内容を調査します。

  • 家庭訪問などによる生活状況
  • 預貯金、生命保険、不動産などの資産
  • 給与、年金、手当、仕送りなどの収入
  • 親族から援助を受けられる可能性
  • 病気、障害、介護、求職状況など就労に関する事情
  • 利用できる年金や社会保障制度

年金を受け取っている人は、生活保護との二者択一ではありません。年金生活者支援給付金などを含む収入を確認し、それでも最低生活費に満たない場合に差額が検討されます。

家賃の支払いが難しいものの、収入や資産が生活保護の基準を上回る場合は、住居確保給付金など別制度も確認します。

必要書類がなくても、まず申請できる

申請書には、氏名、住所または居所、生活保護を必要とする理由、資産・収入の状況などを記入します。調査では次のような資料の提出を求められることがあります。

  • 預貯金通帳や残高が分かる資料
  • 給与明細、年金額、各種手当など収入が分かるもの
  • 健康保険、生命保険、不動産、自動車の状況が分かるもの
  • 賃貸借契約書や家賃の請求書
  • 病気や障害、介護の状況が分かる資料

これらは審査を早めるために役立ちますが、すべてそろうまで申請を待つ必要はありません。申請書を作れない特別な事情がある場合は、申請書がなくても申請できると厚生労働省は案内しています。

決定は原則14日以内、特別な理由がある場合は30日まで

生活保護法では、申請後の決定通知は原則14日以内と定められています。扶養義務者の資産・収入調査に時間がかかるなど特別な理由がある場合は、30日まで延長されることがあります。

保護が開始される場合も、申請が却下される場合も、決定と理由は書面で通知されます。申請から30日を過ぎても通知がないときは、申請日を確認できる控えを手元に置き、福祉事務所へ処理状況を確認してください。

生活保護の相談そのものに全国共通の受付期限はありません。ただし、手元の生活費が減り続けるため、申請を考えているなら書類集めだけで何週間も待たないことが大切です。

生活費以外にも8種類の扶助がある

生活保護には、日常の生活費だけでなく、必要に応じて次の扶助があります。

扶助 主な対象
生活扶助 食費、衣類、光熱水費など
住宅扶助 基準の範囲内の家賃など
教育扶助 義務教育の学用品費など
医療扶助 必要な医療サービス
介護扶助 必要な介護サービス
出産扶助 出産費用
生業扶助 就労に必要な技能習得、高校就学費用の一部など
葬祭扶助 葬祭費用

医療扶助と介護扶助は、原則として費用が医療機関や介護事業者へ直接支払われ、本人負担はありません。自由診療、差額ベッド代など、すべての費用が対象になるわけではないため、利用前に福祉事務所へ確認します。

高額療養費は公的医療保険の自己負担を抑える制度で、生活保護の医療扶助とは仕組みが異なります。

受給後は収入申告や訪問調査がある

生活保護が決定した後は、保護費を受け取るだけではありません。

  • 給与、年金、仕送りなどの収入を毎月申告する
  • 世帯の状況に応じてケースワーカーの訪問を受ける
  • 働ける場合は、能力や健康状態に応じて就労に向けた助言・指導を受ける
  • 転居、就職、離職、入院、世帯員の増減など生活状況の変化を届け出る
  • 利用できる年金や手当がある場合は、その手続きを進める

収入を申告しないと、後から保護費の返還や徴収につながることがあります。アルバイト代や家族からの送金など、扱いが分からない収入も自分で除外せず、ケースワーカーへ申告してください。

貸付を勧められたときは返済条件を確認する

福祉事務所への相談前後に、社会福祉協議会の生活福祉資金などを案内されることがあります。しかし、貸付は原則として返済が必要です。

緊急小口資金・総合支援資金を使っても継続的に生活費が不足する見込みなら、「借りれば解決する」とは限りません。返済開始後の家計を含め、生活保護とどちらが現在の状況に合うか相談してください。

今日の食費や今夜の住まいがないとき

相談予約を取る際に、緊急性を最初に伝えます。

「今日食べるものがない」 「今夜泊まる場所がない」 「電気が止まり、乳幼児がいる」 「薬が切れるが、受診するお金がない」

住むところがない場合は、現在いる場所の近くの福祉事務所へ相談できます。施設への入所へ同意することが申請条件というわけでもありません。

申請するか迷う段階なら、生活保護担当へ世帯の収入、預貯金、家賃、病気や介護の事情を伝えます。申請の意思がある場合は、その意思も明確に伝えてください。

公式情報

※最低生活費、住宅扶助の上限、資産の保有、扶養照会の扱いは、地域、世帯構成、健康状態、資産の用途、親族関係などによって変わります。個別の対象判定は、現在いる地域を所管する福祉事務所へ確認してください。

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