在職老齢年金とは?2026年度の基準額65万円と減額の計算

年金・社会保険

「年金をもらいながら働くと、年金が全部止まるのでは」と心配になる人がいます。

結論からいうと、働きながら老齢年金を受け取ることはできます。給与と年金の合計が一定額を超えた場合に、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる仕組みが「在職老齢年金」です。

2026年度(令和8年度)は、支給停止を判定する基準額が月51万円から65万円に引き上げられました。計算には手取り額ではなく、標準報酬月額と標準賞与額を使うため、毎月の給与だけを見ても判断できません。

この記事では、2026年4月からの制度を基準に、対象者、計算方法、老齢基礎年金との違い、年金額が変わったときの確認方法を整理します。

在職老齢年金とは?

在職老齢年金は、老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働く人などを対象に、老齢厚生年金の一部または全部を調整する制度です。

70歳未満で厚生年金保険に加入して働く場合だけでなく、70歳以上でも厚生年金保険の適用事業所で働いている場合は、在職による支給停止の対象になることがあります。

大事なのは、「働いているかどうか」だけではなく、次の3点を分けて確認することです。

  1. 受け取っている年金が老齢厚生年金か
  2. 厚生年金保険の加入状況、または70歳以上なら適用事業所での勤務状況がどうなっているか
  3. 老齢厚生年金の基本月額と、給与・賞与を含む総報酬月額相当額がいくらか
状況 在職老齢年金による調整
老齢厚生年金を受け取り、厚生年金保険に加入して働いている 対象になる場合がある
70歳以上で、厚生年金保険の適用事業所に勤務している 対象になる場合がある
老齢基礎年金だけを受け取っている 在職老齢年金による調整の対象外
厚生年金保険に加入しない働き方をしている 原則として在職老齢年金の調整対象外。ただし年金の種類などを確認

2026年度の基準額は月65万円

2026年4月から、在職老齢年金の支給停止調整額は月65万円です。

2025年度までは月51万円が基準でした。古い解説や検索結果には51万円と書かれている場合があるため、2026年4月以降の確認では、令和8年度の65万円を使います。

基準額は、毎年度の賃金の変動に応じて改定される仕組みです。翌年度以降も同じ金額とは限らないため、記事を読む時点の日本年金機構の案内を確認してください。

何が65万円を超えると調整されるのか

判定に使うのは、次の2つを合計した金額です。

基本月額

基本月額は、加給年金額を除いた老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の月額です。

年金振込通知書に記載された年金の総額を、そのまま基本月額として使うわけではありません。老齢基礎年金などは、在職老齢年金の計算対象と分けて考えます。

総報酬月額相当額

総報酬月額相当額は、次の計算で求めます。

その月の標準報酬月額 + その月以前1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12

つまり、毎月の給与だけでなく、過去1年間の賞与も月額換算して含めます。手取り額や、単純な年収を12で割った金額と同じとは限りません。

給与明細の手取り額だけを見て「65万円未満だから大丈夫」と判断せず、勤務先から届け出られている標準報酬月額と標準賞与額を確認する必要があります。

在職老齢年金の計算方法

合計が65万円以下なら、在職による調整はない

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が65万円以下なら、在職老齢年金による老齢厚生年金の支給停止はありません。

合計が65万円を超えると、超えた分の2分の1が停止

合計が65万円を超える場合の支給停止額は、次の式で計算します。

支給停止額(月額)=(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2

調整後の老齢厚生年金は、次の式で確認できます。

調整後の老齢厚生年金=基本月額-支給停止額

計算結果がマイナスになる場合は、老齢厚生年金が全額支給停止になることがあります。ただし、老齢基礎年金は在職老齢年金による支給停止の対象ではなく、原則として全額支給されます。

計算例:給与だけでなく、年金の基本月額も見る

例1:合計が65万円以下の場合

  • 基本月額:12万円
  • 総報酬月額相当額:50万円
  • 合計:62万円
  • 支給停止額:0円

この場合、在職老齢年金による老齢厚生年金の調整はありません。

例2:合計が65万円を超える場合

  • 基本月額:18万円
  • 総報酬月額相当額:55万円
  • 合計:73万円
  • 65万円を超える額:8万円
  • 支給停止額:4万円
  • 調整後の老齢厚生年金:14万円

この場合も、老齢基礎年金は在職老齢年金の計算とは別に支給されます。

実際の年金額には、加給年金、基金の代行部分、他の制度による調整などが関係することがあります。上の例は、制度の基本的な計算を理解するための単純化したものです。

老齢基礎年金は、在職老齢年金で減らされない

在職老齢年金で調整されるのは、基本的に老齢厚生年金です。

老齢基礎年金は、給与と老齢厚生年金の合計が65万円を超えた場合でも、在職老齢年金の計算によって停止されません。

そのため、年金の振込額が変わったときは、年金全体が減ったと考えず、次の内訳を確認します。

  • 老齢基礎年金はいくらか
  • 老齢厚生年金はいくらか
  • 厚生年金保険の支給停止額はいくらか
  • 加給年金など、別の項目に変更がないか

「年金が減った」という一言だけでは、どの部分が変わったのか分かりません。年金額改定通知書や支給額変更通知書の内訳を確認します。

働きながらでも、年金額が増える場合がある

厚生年金保険に加入して働いた期間は、条件に応じて将来の年金額に反映されます。

65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている人には、毎年の加入実績を年金額に反映する「在職定時改定」があります。9月1日時点で厚生年金の被保険者である場合、前年9月から当年8月までの加入期間が追加され、通常は10月分から年金額が見直されます。

一方で、支給停止額が変わる場合もあります。働き続けることで年金の計算上の加入期間が増える面と、給与・賞与によって老齢厚生年金が調整される面は、別々に確認します。

給与が変わったとき、年金はいつ見直される?

在職老齢年金の支給停止額は、総報酬月額相当額が変わった月などに変更されます。

退職した場合は、退職して1カ月を経過したときに、退職した翌月分から年金額が見直されます。ただし、退職後1カ月以内に再就職して厚生年金保険に加入した場合などは、扱いが異なります。

給与が変わったのに年金額が変わらない、退職したのに通知が届かないなど、反映時期が分からない場合は、勤務先の給与情報と年金の通知書を用意して年金事務所へ相談します。

年金を受け取るには、別途請求手続きが必要

働いているからといって、老齢年金の請求が不要になるわけではありません。

老齢年金は、受給開始年齢に達しただけで自動的に支給が始まるものではなく、年金請求書を提出する手続きが必要です。在職老齢年金による支給停止は、年金を請求した後に、給与や厚生年金の加入状況に応じて調整される仕組みです。

まだ年金を請求していない人は、請求書に記載された請求時期と提出先を確認します。働き続ける場合でも、請求するか、繰下げを希望するかは別途判断が必要です。

年金の振込額が変わったときに確認するもの

年金額が変わったときは、次の書類を確認します。

年金額改定通知書・支給額変更通知書

年金額や支給停止額が変更された場合は、年金額改定通知書や支給額変更通知書に理由と内訳が記載されます。

2026年4月の制度改正によって支給停止額が変わった人には、厚生年金保険の支給停止額欄に「#」が表示される案内もあります。

年金振込通知書

実際の振込額を確認するときは、年金振込通知書を見ます。ただし、振込通知書だけでは、給与や賞与のどの情報で支給停止額が計算されたかまでは判断しにくい場合があります。

振込額の変化に疑問があるときは、年金額改定通知書や支給額変更通知書とあわせて、標準報酬月額・標準賞与額の反映状況を確認します。

年金生活者支援給付金とは、別の制度

在職老齢年金の支給停止基準と、年金生活者支援給付金の所得要件は別の制度です。

働きながら年金を受け取っている人が給付金も確認する場合は、在職老齢年金の計算だけで対象・対象外を決めず、給付金側の所得条件、年金の種類、請求方法を別に確認します。

どこに相談すればよい?

在職老齢年金の金額は、年金の種類、標準報酬月額、賞与、厚生年金基金の加入歴などによって変わります。自分のケースを正確に確認したい場合は、次の窓口を利用します。

相談前に、次のものを揃えておくと確認しやすくなります。

  • 年金証書や年金額改定通知書
  • 年金振込通知書、支給額変更通知書
  • 給与明細と賞与の支給明細
  • 勤務先と勤務期間が分かる資料
  • 基礎年金番号を確認できる書類

電話番号や予約方法は変更されることがあるため、検索結果に表示された番号ではなく、日本年金機構の公式サイトで最新の連絡先を確認します。

まとめ|見るべきは「給与」だけでなく、年金の内訳

在職老齢年金を確認するときは、次の順番で見ます。

  1. 自分が老齢厚生年金を受け取っているか確認する
  2. 厚生年金保険に加入して働いているか確認する
  3. 老齢厚生年金の基本月額を確認する
  4. 標準報酬月額と、過去1年間の標準賞与額から総報酬月額相当額を確認する
  5. 2つの合計が2026年度の基準額65万円を超えるか確認する
  6. 年金額改定通知書や支給額変更通知書で、停止額の内訳を見る
  7. 分からない場合は、年金事務所や日本年金機構に相談する

働きながら年金を受け取ること自体が、年金の全額停止を意味するわけではありません。2026年度は基準額が65万円に変わったため、古い51万円の情報と混同しないことが重要です。

なお、在職老齢年金の調整対象は主に老齢厚生年金で、老齢基礎年金は別に扱われます。振込額だけで判断せず、年金の内訳と給与・賞与の反映状況を確認してください。

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