情報確認日:2026年10月13日
通常の通院に使ったタクシー代は、健康保険の「移送費」の対象になりません。移送費は、歩行が著しく困難な患者を、緊急などやむを得ない事情で移送する場合の給付です。
一方、治療のために必要な交通費は、医療費控除の対象になることがあります。タクシーを利用した理由と移動の目的によって扱いが変わるため、「保険から戻るお金」と「税の負担を下げる控除」をそれぞれ確認します。
移送費は緊急性など3つの条件で判断される
協会けんぽは、移送費について次の条件を示しています。
- 移送先の治療が保険診療として適切である
- 病気やけがのため、歩行が著しく困難である
- 緊急その他のやむを得ない事情がある
医師の指示も必要です。「車いすを使っている」「介護タクシーを利用した」という事実だけで決まる制度ではありません。協会けんぽ・移送費
転院を案内された場合は、病院の相談員や医師に移送が必要な理由を確認し、加入先の健康保険へ相談します。緊急時は治療を優先し、後から領収書や医師の意見をそろえる流れを尋ねてください。
定期通院や退院時の帰宅は対象外
協会けんぽは、歩けない人が自宅から通院する交通費や、退院して帰宅するときの移送を対象外の例に挙げています。近くで十分な治療が受けられるのに、本人の希望で遠い病院へ移る場合も対象外と案内しています。
| 移動の事情 | 確認する制度 |
|---|---|
| 通常の通院・退院時の帰宅 | 移送費は対象外。税控除や地域の助成を確認 |
| 病状により緊急に別の病院へ移る | 医師の指示と移送費の要件を加入先へ相談 |
| 治療のため電車やバスで通う | 医療費控除の対象交通費を確認 |
| 自家用車のガソリン・駐車場代 | 医療費控除の対象外 |
自治体独自の福祉タクシー券や移動支援を使える場合もあります。対象は障害の程度や居住地などで異なるため、支払う前に福祉担当窓口へ確認してください。
移送費が認められても、請求額全額とは限らない
移送費は、最も経済的な通常の経路・方法による旅費を基準に、認められる範囲の実費が支払われます。医師や看護師の付き添いが必要な場合は、原則1人分の交通費なども対象です。
搬送事業者の見積書は、車両料金、介助、待機、医療職の同行などの内訳を残しましょう。家族は「全部まとめて保険が利く」と受け止めず、健康保険にどの項目が給付対象となるかを尋ねます。
申請先は加入している健康保険です。協会けんぽの移送費支給申請書を使う場合も、搬送を担当した事業者への支払いと保険者への申請は別の手続きになります。
協会けんぽへの申請には、移送費の領収書と明細に加え、移送が必要だった理由、経路・方法・年月日、診療日等を記した医師または歯科医師の意見書を添えます。移送費は、費用を支払った日の翌日から2年で時効になります。移送費申請書・必要書類・期限
医療費控除では、公共交通を使えなかった事情も伝える
国税庁は、診療を受けるために直接必要で、通常必要な通院費を医療費控除の対象としています。電車やバスの運賃が基本で、タクシー代は公共交通機関を利用できない場合を除き対象外です。国税庁・医療費の対象と対象外
タクシーを使った人は、日付、受診先、区間、金額とともに、病状など利用が必要だった事情を控えてください。単に楽だから選んだ場合と、病状から必要だった場合は同じ扱いにはなりません。
自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外です。国税庁の通院費の説明
保険金などで医療費が補われた場合は、その給付の対象となった医療費から差し引いて計算します。差し引くのは対象の医療費の額までで、給付金が上回っても、残りをほかの医療費から差し引く必要はありません。国税庁・医療費控除の計算
相談には領収書と移動の事情を持っていく
保険者へは「誰が、いつ、どこからどこへ、なぜ移ったか」を伝えます。税務署へは、年間の医療費の資料とともに、通院交通費の記録を用意してください。交通費だけの金額を伝えるより、対象の判断に必要な事情を説明できます。
医療費控除は、対象費用の全額が現金で戻る制度ではありません。支払った医療費や所得などに応じて、所得税等の計算で控除を受けるものです。移送費の対象にならなかった領収書もすぐ捨てず、控除の確認が終わるまで保存しておきましょう。
参照資料(2026年10月13日確認):協会けんぽ・移送費、国税庁・医療費、医療費控除の仕組み。

