親が突然失業した、病気で長く働けなくなった。前年までは収入があっても、今の家計では授業料や通学費を払えないことがあります。
こうしたときに確認したいのが、日本学生支援機構(JASSO)の給付奨学金「家計急変採用」です。急変後の収入状況をもとに審査する仕組みがあり、通常の春・秋の募集を待たずに申し込めます。
ただし、収入が減った人すべてが対象ではありません。また、通年募集でも申請期限があります。まず在学する学校の奨学金窓口に、何がいつ起きたかを伝えてください。
制度確認日:2026年8月31日。2026年度の公式案内に基づきます。学校内の締切や提出方法は、在学校の最新案内を確認してください。
家計急変採用は「返す奨学金」ではなく給付奨学金
家計急変採用は、原則として返還を必要としない給付奨学金の申込方法の一つです。通常の募集との主な違いは、対象となる急変事由があり、その人の急変後の収入を用いて家計を判定する点にあります。
対象となる学校種は大学、短期大学、高等専門学校の第4学年以上、専修学校の専門課程などです。対象機関であることに加え、学業、入学時期、国籍・在留資格などの要件もあります。大学院の学生向けの制度と混同しないようにしましょう。
出典:JASSO「家計急変採用」、JASSO「家計急変採用の申込み」
対象になるのはどんな事情?単なる収入減だけでは決まらない
JASSOが定める主な事由は次のとおりです。「生計維持者」は家計を支える人をいい、通常は父母などが該当します。
- 生計維持者が亡くなった。
- 生計維持者が事故や病気で3か月以上、働くことが難しくなった。
- 生計維持者が自分の意思によらず失業した。
- 震災・火災・風水害などで、上記の死亡・就労困難・失業や、行方不明など世帯収入を大きく減らす事情が生じた。
- 学生本人が父母等の暴力などから避難した。
失業については「非自発的失業」に当たるかの確認が必要です。自己都合退職や定年退職、支出が増えただけのケースを、同じ条件で申し込めるとは考えないでください。また、申請時点で再就職などにより急変の事由が解消している場合も対象外となります。
事情を説明するだけでなく、所定の証明書類で確認できることが必要です。判断に迷う場合は、書類をそろえてからではなく、まず学校に相談してください。
出典:JASSO「家計急変採用の対象となる事由」、2026年度給付奨学金案内・家計急変採用(PDF)
申請は原則3か月以内。春・秋の募集を待たない
在学中に事情が生じた場合、申請は事由発生日から原則3か月以内です。進学前に生じていた場合は、進学後3か月以内が基本ですが、対象になる事由発生月の範囲も進学月によって決まっています。
「年中申し込める」は「いつまでも申し込める」という意味ではありません。失業日や、診断書に記載される就労困難の開始日など、どの日を事由発生日とするかも確認が必要です。
相談時には、次の3点を伝えると話を進めやすくなります。
- 誰に、どのような事情が起きたか。
- その事情が生じた日と、現在も続いているか。
- 今受けている奨学金と、次の授業料の納付期限。
既に通常の給付奨学金を受けている人にも、家計急変による変更手続きがあります。新規申込みと同じだと判断して重ねて入力せず、現在の採用状況を学校に伝えましょう。
給付額はいくら?学校・通学形態・支援区分で変わる
次の表は、大学・短大・専門学校の通常の課程で、第Ⅰ区分に該当する場合の月額例です。家計急変採用に申し込めば全員がこの金額を受け取れるわけではありません。
| 学校の区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
|---|---|---|
| 国公立 | 29,200円 | 66,700円 |
| 私立 | 38,300円 | 75,800円 |
生活保護を受ける生計維持者と同居する人など、自宅通学の月額に例外があります。高等専門学校や通信教育課程は別の金額です。また、自宅外通学は、単に実家と住所が違うだけでは認められず、要件と証明書類の確認があります。
前年の年収だけで諦めない。ただし資産などの審査もある
家計急変採用では、急変した人について急変後の収入から年間の所得を見積もるなどして審査します。急変していない生計維持者などの所得も含めて判定されるため、家族の1人の収入がなくなっただけで支援区分が決まるわけではありません。
給付奨学金には資産基準もあり、学生本人と生計維持者の資産の合計が5,000万円未満であることなどが求められます。「現在無収入だから必ず採用」「去年の年収が高かったから絶対に対象外」と、どちらも自己判断しないことが大切です。
学校へ相談してから、証明書類と申込手続きを進める
窓口は在学校の奨学金担当です。家計急変の事由を証明する書類、急変後の収入を確認する書類などを、学校の案内に沿って準備します。事由によって必要書類は違うため、インターネットで見つけた別の学生の書類一覧をそのまま使わないでください。
病気による就労困難では、診断書の記載内容や勤務先の休職証明などが問題になります。診断書を依頼する前に、必要な記載事項を学校に確認すると、取り直しを避けやすくなります。
学校から案内されたスカラネット入力やマイナンバー関係の手続きも必要です。「学校に相談した」だけで申請が完了したと思わず、何をいつまでに提出・入力するかをメモしておきましょう。
授業料の納付が迫っている場合は、奨学金の審査とは別に、学校へ納付猶予・分納や授業料減免の手続きも確認してください。相談した日に奨学金が入金される制度ではありません。
採用後も報告が必要。対象外なら貸与との違いを確認する
家計急変採用は、採用後も原則3か月ごとに収入資料などを提出し、支援区分の見直しを受けます。一定期間の収入確認後は年1回の見直しとなります。家計状況によって支給額が変わるため、学校から届く案内を確認してください。
給付の条件に当てはまらないときは、通常の給付奨学金の募集や、貸与奨学金の緊急採用・応急採用も相談候補になります。ただし、貸与は返還が必要です。給付とは対象事由も異なるため、「家計急変」という言葉だけで同じ制度と思わないでください。
貸与の条件はJASSO「緊急採用・応急採用の申込資格」で確認できます。学費以外の支援も探す場合は、教育・進学費の支援一覧、親の病気による収入減については傷病手当金の解説も参考にしてください。


