補助金を探すとき、最初に制度名を検索する人は少なくありません。
しかし、補助金は「使える制度があるから申し込む」ものではありません。自分の事業に必要な投資を決め、その負担を軽くする手段として検討するものです。
この記事では、個人事業主や小規模店舗が補助金を申請する前に考えたい、5つの判断基準を整理します。
制度の対象者、補助率、金額、申請期限を確認したい方は、先にこちらの記事をご覧ください。
小規模事業者持続化補助金 第20回|個人事業主・法人の対象、経費、申請期限
補助金は、事業計画の代わりにならない
小規模事業者持続化補助金のように、経営計画に基づく販路開拓や業務効率化を支援する制度では、購入するものだけを説明しても十分ではありません。
「自社の現状」から始めて、「困っていること」「狙う顧客」「実施する取組」「必要な経費」「投資後の変化」までをつなげる必要があります。
制度を探す前に、この流れを自分の言葉で説明できるか確認します。
判断基準1 何を改善したいのか一文で言えるか
最初に決めるのは、何を買うかではなく、何を改善するかです。
- 新しい顧客を増やしたい
- 広告や販路を見直したい
- 手作業を減らしたい
- 忙しい時間帯の負担を減らしたい
- 新しい商品やサービスを試したい
たとえば「ホームページを作りたい」だけでは、事業の目的が見えません。
「紹介に頼っている現状を変え、特定の顧客層にサービス内容と予約方法を届けたい」のように、何を変えたいのかを書きます。
判断基準2 誰に、どんな価値を届けるのか決まっているか
広告、チラシ、展示会、ウェブサイト、設備など、使う経費が同じでも、対象とする顧客が違えば計画は変わります。
- どの地域・年齢層・業種の顧客を想定するか
- その顧客は現在どこから来ているか
- いま届いていない理由は何か
- 取組によって、顧客の行動をどう変えたいか
「売上を増やしたい」という目標だけでなく、誰に何を伝え、どのように購入や予約につなげるのかまで考えます。
判断基準3 補助金がなくても必要な投資か
補助金があると、対象経費の負担を軽くできる可能性があります。
一方で、補助金を使うために必要のない設備を購入すると、事業にとっては負担になります。
次の二つを分けて考えます。
- 補助金がなくても、事業に必要な投資なのか
- 補助金があるなら、実施時期を早められるのか
補助金がなければ実施しない場合は、採択されなかったときにどうするかも決めておきます。規模を小さくするのか、時期を延期するのか、別の方法で試すのかを先に考えます。
判断基準4 補助金が入る前の支払いに耐えられるか
補助金は後払いです。採択されても、すぐに入金されるとは限りません。
制度によっては、採択後に見積書などの確認を受け、交付決定を経てから事業を始めます。交付決定前の発注・契約・支出が対象外となる制度もあります。
申請前に、次の資金繰りを確認します。
- 事業費を一度立て替えられるか
- 補助対象外の費用も支払えるか
- 補助金が減額された場合に続けられるか
- 採択されなかった場合の代替案があるか
「補助金が出る前提」でしか成立しない計画なら、投資額や実施時期を見直す必要があります。
判断基準5 投資後の効果を確認できるか
「便利になる」「売上を増やしたい」だけでは、投資の効果を確認できません。
現在の状況を記録し、投資後に何を見るのか決めます。
- 問い合わせ件数
- 予約件数
- 来店客数
- 受注件数
- 作業時間
- 一人あたりの対応件数
大きな数字を作る必要はありません。直近の記録や帳簿、予約表、問い合わせ履歴など、確認できる事実をもとに、変化を測れる形にします。
仮想例 小規模店舗がウェブサイトを作る場合
従業員数名の店舗が、ウェブサイトの制作を検討しているとします。
「ホームページを作りたいので補助金を申請する」という計画では、目的が曖昧です。
一方で、次のように整理できれば、事業者の判断が見えます。
- 現在は既存客からの紹介に集客が偏っている
- 新しく届けたい顧客層を決める
- サービス内容、料金、予約方法を分かりやすく伝える
- 公開後の問い合わせや予約の変化を確認する
- 制作費を先に支払えるか、対象経費に該当するかを確認する
この場合も、実際に対象になるかどうかは、申請する制度の公募要領で確認します。仮想例だけで対象可否を判断してはいけません。
申請を急がない方がよいケース
次のような状態なら、制度を探す前に計画を作り直します。
- 買いたい設備だけが決まっている
- 誰に売るのか決まっていない
- 現在の課題を記録していない
- 補助金が入るまでの資金を用意できない
- 申請書や実績報告に対応できない
- 採択されなかった場合の計画がない
補助金は、申請すれば必ず受け取れるものではありません。申請しない、規模を小さくする、別の方法で試すという判断も、事業者にとって必要な選択です。
申請前の確認リスト
- □ 改善したい課題を一文で書いた
- □ 届けたい顧客を決めた
- □ 投資後に確認する数字を決めた
- □ 補助金がなくても必要な投資か考えた
- □ 補助金が入る前の支払いに対応できる
- □ 交付決定前の発注・契約が対象外にならないか確認した
- □ 必要書類と相談先を確認した
- □ 採択されなかった場合の代替案を作った
まとめ
補助金を選ぶとき、最初に見るのは補助率や上限額ではありません。
自分の事業のどこを改善したいのか、誰に価値を届けたいのか、投資を続けられる資金計画なのかを先に確認します。
補助金は、事業の目的を決めてから組み合わせるものです。制度に合わせて事業を作るのではなく、必要な事業に制度を合わせます。
対象条件、対象経費、申請期限、交付決定前の取扱いは制度ごとに異なります。実際に申請する際は、必ず最新の公募要領と公式案内を確認してください。


