物価高で生活がきつい。毎月の支払いがしんどい。私の周りでも、そうした声をいろいろなところで聞く。
政府に求めたいのは、家計の負担を実際に減らす対策だ。対策を発表したことを成果にされても、買い物や請求書の支払いで苦しむ人の暮らしは楽にならない。
そこへ、ビール大手4社やアイスクリーム大手6社の価格カルテル疑惑が出ている。家計への支援を急ぐと同時に、競争を止めて価格を調整していなかったか、徹底して調べる必要がある。生活者ばかりに我慢を求める状況は、もう改めるべきだ。
食料は前年より3.1%高い。負担はまだ続いている
総務省の2026年8月分の消費者物価指数では、総合は前年同月比1.9%の上昇だった。食料は3.1%、生鮮食品を除く食料も2.7%上がっている。9月18日に公表された数字だ。
物価の上昇率が以前より小さくなっても、積み重なった値上がりが消えるわけではない。食料品の価格は、前年よりさらに高くなっている。
一方、10月7日公表の厚生労働省の8月分速報では、実質賃金は前年同月比1.5%増だった。平均値の改善は認める。その数字だけで、年金生活者を含めた各家庭の暮らしまで楽になったと判断するのは早い。
食費も、生活に必要な日用品も、毎月買わなければならない。支払いを繰り返すたびに負担を感じている人に、さらに節約を求めるだけでは限界がある。
ビール4社に強制調査、アイス6社にもカルテル疑惑
10月7日の報道によると、公正取引委員会は、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールに、独占禁止法違反の疑いで強制調査に入った。ビール類の出荷価格を巡り、値上げ幅などを事前に示し合わせた疑いがある。アサヒビールも同日の強制調査を公表している。
6月16日には、アイスクリームなどの価格カルテルの疑いで、明治、森永乳業、森永製菓、ロッテ、江崎グリコ、赤城乳業の6社が立ち入り検査を受けたと報じられた。明治の公式発表も、販売価格の決定に関する独禁法違反の疑いで検査を受けたと説明している。
いずれも調査段階の疑いであり、違反が認定された事件として扱うことはできない。各社が実際に何をしていたのか、消費者の負担にどれほど影響したのかは、調査で明らかにすべきことだ。
もし競争相手同士が値上げ幅や時期を決めていたなら、原材料高を受けて各社が独自に価格を見直すこととは、全く話が違う。生活者が値上げを受け入れざるを得ない状況に乗じて競争を止めていたのなら、到底許されない。
値上げを何でも「仕方ない」で済ませるな
原材料、人件費、物流費の上昇を販売価格に反映すること自体は、事業の継続や働く人の賃金を守るためにも必要だ。その判断は、企業ごとに独立して行われなければならない。
公取委の9月2日の会見でも、この原則を説明し、物価高の局面での価格カルテルを警戒する姿勢を示している。
調査に入ったことは評価したい。だからこそ、最後まで事実を解明し、違反が確認された場合は厳正に対処してほしい。企業側にも、調査への協力と十分な説明を求める。
物価高には複数の要因がある。今回の疑惑だけで全体を説明するつもりはない。それでも、不当な価格調整が生活費に上乗せされることを防ぐのは、家計を守るうえで欠かせない仕事だ。
給付は「誰に、いくら、いつ届くか」まで示せ
政府は、2026年7~9月使用分の電気・都市ガス料金の支援を実施した。負担を下げるこうした措置は必要だ。
そのうえで、苦しい家庭の生活を支えるには何が足りないのかを、もっと具体的に考えてほしい。対策の規模や項目を並べるだけでは、十分とは言えない。
私が求めるのは、給付の対象、金額、支給時期を明確にし、困っている人の手元へ早く届けることだ。住民税非課税世帯だけで線を引く案なら、その少し上で働いている人や、年金でやりくりしている世帯の負担も検討すべきだ。
支援を受けるための手続きも、できるだけ簡単にしてほしい。生活が苦しい人ほど、複雑な申請に時間をかけられるとは限らない。制度を作ったところで、必要な人に届かなければ役割を果たさない。
電気やガスの支援も、支援が終わる時期の家計負担まで見て判断してほしい。そして、生活に身近な商品の価格について、公取委の調査と監視を後押しする。家計への支援と、公正な競争を守る取組の両方が必要だ。
政府は、生活が楽になったかで答えてほしい
給付や料金支援には財源が要る。だからこそ、どの家庭に、どれだけの負担軽減が届くのかを示し、効果を確かめるべきだ。財源の説明と一緒に、生活を守る具体策を出してほしい。
物価高でしんどいという声を、個人の節約の問題に押し込めるな。今月の生活に困っている人に、先の議論だけ聞かせても助けにはならない。
政府は家計に届く対策を急ぎ、公取委はカルテル疑惑を徹底して調べる。企業は価格決定の公正さについて、説明責任を果たす。その仕事を進めずに、生活者の我慢をあてにすることには、私は強く反対する。
確認日:2026年10月8日。この記事は、現在の調査状況と統計を踏まえた筆者の論評です。給付の拡充などは筆者の提案で、支給が決定した制度の案内ではありません。


